1993 Fiscal Year Annual Research Report
量子波束法を用いた準安定高振動励起状態の理論的研究
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05453026
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Research Institution | Institute Fundamental Chemistry |
Principal Investigator |
山下 晃一 財団法人基礎化学研究所, 主任研究員 (40175659)
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Keywords | 量子波束法 / 高振動励起状態 / 時間発展作用子 / ポテンシャル面 / 光解離反応 / カオス的振動スペクトル / 準安定共鳴状態 / 非断熱遷移 |
Research Abstract |
1.量子波束法の開発:3原子分子の反応系に適した結合距離座標と質量加重ヤコビ座標を用い、時間に依存したシュレジンガー方程式を数値的に解く方法を開発した。対象とする量子動力学過程に関連して3種類の時間発展作用子を導入し、それぞれについてプログラム化した。(a)通常の量子波束法に用いられる実時間tについての時間発展作用子exp(-itH/h)、(b)虚時間tについての時間発展作用子exp(-tH/h)を用いた緩和法、(c)高い固有状態を対象とする時間発展作用子exp(-t(H-a)^2/h)。 2.緩和法によるH_3^+系の高振動励起状態:(c)の方法によると波束は十分長時間の後、任意のエネルギー値aをもつ系の振動励起状態に直接的に収束させることができる。perimetric座標系の分子ハミルトニアンを用い、具体的に振動カオスとの関連で興味がもたれているH_3^+系へ応用した。 3.CH_3SH分子の光解離ダイナミックスと遷移状態分光:ab initio計算の結果、励起1A″、2A″断熱状態から得られたCH_3S+SH解離チャネルに対応する透熱状態U_1と、CH_3S+H解離チャネルにつながる透熱状態U_2は、Frank‐Condon領域で交差した。透熱状態U_2に電子励起された初期波束の時間発展を時間に依存した結合シュレジンガー方程式を解いて、遷移状態領域での非断熱性が2種の反応性チャネルの生成比を決定することを明かとした。 Li_3分子のカオス的振動スペクトルの波束ダイナミックス:(a)の方法を用いてSEP実験をモデルとした分子振動の3次元波束ダイナミックスを検討した。異なったエネルギー期待値<E>を持つ波束について、自己相関関数に再帰構造が観測された。<E>が低い波束について規則的であった再帰構造は、<E>=898cm^<-1>で、不規則なパターンを示した。3つのC_<2v>安定構造間の運動に起因する準周期的な軌道(連続状態に埋った準安定共鳴状態に対応する)と共に振動のカオス的な運動が示唆された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] K.Yamashita: "Theoretical Study on the Highly Vibrationally Exited States of FMF^-:Ab Initio Potential Energy Surfaces and Hyperspherical Formulation" J.chem.Phys.99. 8848-8855 (1993)
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[Publications] B.Weis: "Theoretical Potential Energy Functions and Rovibronic Spectrum of Electronically Excited States of HCO^+" J.chem.Phys.99. 9512-9520 (1993)
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[Publications] W.Gabriel: "Theoretical Rotational‐Vibrational Spectrum of SiH_2(X^1A_1 and a^3B_1)" chem.Phys.174. 45-56 (1993)
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[Publications] K.Ishii: "An Ab Initio Prediction of the Spectroscopic Constants of MgNC" Astrophys J.410. L43-L44 (1993)