1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05453030
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
成田 吉徳 九州大学, 有機化学基礎研究センター, 教授 (00108979)
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Keywords | カタラーゼ / 過酸化水素 / マンガン錯体 / ポルフィリン |
Research Abstract |
金属酵素には複数の金属イオンを含有していたり、金属イオン周辺にポリペプチド鎖由来の極性官能基が存在することにより特異な物質変換や物性の発現を行っている。その反応の解明は新たな分子変換を可能とする触媒を開拓する上からも重要である。 (1)チトクロームP-450活性中心の精密モデル錯体の合成 酸素分子を活性化し一酸素添加反応を行うための重要な点の一つは、分子状酸素のO-O結合のヘテロリシスにある。そのためにチオレート軸配位子のような強い電子供与性配位子の存在が必須であるが、安定な酸素錯体の形成はこれまで困難であった。そこで'twin-coronet'ポルフィリンがポルフィリン面上下に2つのポケットを持つことを利用し、それぞれのポケット内にチオレイ-ト配位子と配位酸素分子を安定化する水素基を有するモデル錯体の合成を達成した。 (2)マンガンポルフィリン二量体を用いたマンガンカタラーゼおよび水の酸化分解酵素の機能モデル化 酸素発生機能を持つマンガン含有酵素(マンガンカタラーゼや酸素発生錯体)の反応の機能モデルによる解明を行った。この両者の反応を再現しうる機能モデル錯体として各種のマンガンイオン間間隔をもつマンガンポルフィリン二量体を合成しそのカタラーゼ反応活性を測定した。マンガンイオン間距離を広範囲に設定した各種二量体による検討結果、4.0Åの場合に最も高い活性を示した。この反応の速度論的解析、酸素同位体を用いた反応による生成酸素の解析等から、過酸化水素分子のO-O結合がホモリシスしマンガン(IV)_2錯体の生成が律速段階であると結論づけられた。この反応に重要な因子である窒素塩基の機能については、一般塩基触媒としての役割と、金属への軸配位子としての効果の2種類が考えられている。本研究においてはマンガンポルフィリン二量体の特性を生かしてこの2種類の効果の定量的分離評価に成功した。このようにして最適化されたポルフィリン二量体を媒体として含水アセトニトリル中で陽極酸化を行うと酸素発生が観測された。各種電気化学的手法を用いることによりこの酸素発生が、マンガン錯体触媒による水の4電子酸化であることが明らかとなった。
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[Publications] Y.Naruta,N.Sawada: "Imidazolate-mediated Antiferromagnetic Coupling between Fe(III)" Chem.Lett.1713-1716 (1994)
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[Publications] Y.Naruta,M.Sasayama: "Oxygen Evolution by Oxidation of Water with Manganese" Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33. 1839-1841 (1944)
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[Publications] Y.Naruta,M.Sasayama: "How Do Nitrogen Bases Accelerate the Decomposition of H_2O_2" Chem.Lett.2411-2414 (1994)
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[Publications] Y.Naruta,M.Sasayama: "Importance of Mn-Mn Separation and their Relative Arrangement" J.Chem.Soc.,Chem.Commun.2667-2668 (1994)
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[Publications] Y.Naruta,M.Sasayama: "Preparation of a 1,8-Anthracene-linked Manganese(IV)Porphyrin" Chem.Lett.63-64 (1995)
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[Publications] Y.Naruta,M.Sasayama: "Modeling Reaction of Manganese Catalase.1.Development of" J.Am.Chem.Soc.(in press).
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[Publications] Y.Naruta: "Metalloporphyrins in Catalytic Oxidations" Marcel Dekker, 390 (1994)
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[Publications] 成田 吉徳: "季刊化学総説 生物無機化学の新展開" 学会出版センター(in press), (1995)