1993 Fiscal Year Annual Research Report
反磁性金属を中心金属とする有機ラジカル金属錯体の磁性
Project/Area Number |
05453039
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Research Field |
Inorganic chemistry
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大塩 寛紀 東北大学, 理学部, 助教授 (60176865)
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Keywords | 有機ラジカル / 金属錯体 / 磁性 |
Research Abstract |
反磁性金属をとうした常磁性化学種間の磁気的相互作用は、無視できるほど小さいかあるいは反強磁性的であると考えられてきた。しかしながら、反磁性金属のフロンティア軌道と常磁性化学種の磁気的軌道のエネルギーおよび対称性を考慮し分子を設計すれば、強い強磁性的相互作用をもつ分子の合成が可能である。本研究では、反磁性金属イオンCuI AgIと有機ラジカルイミノニトロキシドとの錯体における、強磁性的相互作用の発現を目指した。 〔Cu(I)(immepy)_2〕(PF_6) Cu(I)イオン(d10電子配置)に二分子のイミノニトロキシドラジカルが配位した錯体は、四面体構造をもち、配位したラジカルどうしは直交する(88.7゚)。磁気測定の結果、配位したラジカル間に強い強磁性的相互作用(2J=+106cm_<-1>)が働く。さらに、この錯体はCu(I)dπからラジカルSOMO(766nm)およびLUMO(464nm)への強い電荷移動吸収帯をもち、このCT相互作用が少なからず強磁性的相互作用の安定化に寄与していると考えられる。 〔Ag(I)(immepy)_2〕(PF_6) Ag(I)イミノニトロキシド錯体もCu(I)錯体と同様四配位四面体構造をもつが、配位したラジカルどうしは76.7゚の角度をなし、僅かに直交性はこわれる。磁化率およびESRの強度の温度変化は、ラジカル間には弱い強磁性的相互作用(θ=3K)が働いていることを示す。さらに、この錯体には、Cu(I)錯体で見られた強い電荷移動吸収帯は観測されない。 反磁性金属イオンを中心金属にもつイミノニトロキシド錯体の系では、銅(I)錯体が予想以上の強い強磁性的相互作用を示した。この結果を踏まえ、この系では多次元ネットワークをつくることが可能な新たな有機ラジカル配位子により、その銅(I)錯体において強磁性体の構築が可能であると考える。
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[Publications] Hiroki Oshio: "Structures and Magnetic Properties of [M(cyclam)(CH_3CN)_2][Ni(dmit)_2]_2(M=Cu,Ni)and[Cu(cyclam)]_2[2,5-DM-DCNQI]_5" Inorg.Chem.32. 4123-4130 (1993)
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[Publications] Hiroki Oshio: "A Weak Antiterromagnetic Interaction between Mn^<2+> Centeres through ICNQ Column Crystal Structures and Magnetic Properties" Inorg.Chem.32. 5697-5703 (1993)