1993 Fiscal Year Annual Research Report
ナトリウムニトロプルシド結晶の光誘起準安定状態の光物性
Project/Area Number |
05453049
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
森岡 義幸 埼玉大学, 理学部, 助教授 (20004492)
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Keywords | ニトロプルシド / 準安定状態 / 光物性 / 光学活性 / 旋光性 / 赤外吸収 |
Research Abstract |
1.測定システムの構築 本年度の最重要課題は,光誘起準安定状態の生成とその物性評価のための実験装置を整備することである.そこで,赤外分光光度計,クライオスタット,可視分光計,光学除振台,バビネソレイユ補償器(以上は本研究費にて購入)を設置した.またクライオスタットの温度制御装置を製作して77K〜300Kの任意の温度に試料を保持できるようにした. 2.熱による準安定状態の消滅過程の研究 これまでの研究により準安定状態を特徴付ける分子種にMS_1とMS_2の2種類があることが知られている.MS_1およびMS_2のNO伸縮振動はそれぞれ1836cm^<-1>,1665cm^<-1>であり,MS_1は約180Kで,MS_2は約130Kで基底状態に戻る.筆者が見出した準安定状態の特異な光学的性質とMS_1およびMS_2との関係を調べ,MS_1が旋光性の発現に不可欠であることを見出した.この結果はSpectrochimica Acata誌に投稿し受理された(1994年7月ごろ出版). 3.[RuCl(en)_2NO]Cl_2(en=エチレンジアミン)型錯体の光誘起準安定状態 ニトロプルシドナトリウム結晶の準安定状態生成の機構を解明する上で,どの様な物質で同様な現象が起こるかを調べることも重要である.立教大学理学部の三木瑛一教授より上記の型の数種のルテニウム錯体の提供をうけ,これらについて赤外およびラマン分光により調べたところ,いくつかの試料において光誘起準安定状態の生成が見られた.NO伸縮振動の低波数シフト,熱および赤色光による消滅などの点でニトロプルシドナトリウムの場合と極めて類似している.この結果は1994年8月,香港で開催される国際ラマン分光学会で発表する.
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