1994 Fiscal Year Annual Research Report
ナトリウムニトロプルシド結晶の光誘起準安定状態の光物性
Project/Area Number |
05453049
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
森岡 義幸 埼玉大学, 理学部, 助教授 (20004492)
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Keywords | 光誘起準安定状態 / ニトロシル錯体 / 旋光性 / 赤外分光 |
Research Abstract |
本年度に得られた研究成果は次のとおりである. 1.ニトロプルシドナトリウム2水和物単結晶の光誘起準安定状態IおよびIIと光学的性質の関係:最近ドイツのグループにより,約190Kで消滅する準安定状態Iと約120Kで消滅する準安定状態IIが存在することが示された.本研究において,過去に研究代表者により見出された準安定状態の特異な光学的性質が,準安定状態Iに起因することを証明した. 2.照射レーザー光の偏光の方向と新奇な光学的性質の発現の関係:上記の光学的性質を説明するためには,準安定状態において旋光性が現れること,また旋光性が現れるために結晶の対称性が低下することを仮定する必要がある.しかし,結晶の対称性を低下させる要因が明確ではなかった.本研究において,レーザー光の偏光方向を変えて準安定状態の生成量と旋光性の測定を行ったところ,偏光方向は準安定状態分子の生成量に影響を与えないが,旋光性発現には顕著に影響することが明らかになった.これはレーザー光の偏光方向が準安定状態分子の空間的な配向を支配しており,この空間的配向が旋光性の発現を導くことを示唆している. 3.ニトロプルシド鉄(II)結晶の光誘起準安定状態:外圏イオンや結晶構造が準安定状態生成に及ぼす影響を調べるためにM(II)[Fe(CN)_5NO]・nH_2Oに関する研究を行った.M=Feではナトリウム塩と異なる次のような現象が見出された.(1)低温(77K)では準安定状態の生成が起こり,室温では不可逆的な光化学反応が起こる.(2)どちらの場合も褐色から緑色への色の変化を伴う.(3)立方晶と単斜晶が存在し,前記(1),(2)は立方晶で起こるが斜方晶ではほとんど起こらない. 4.ニトロシルルテニウム錯体の光誘起準安定状態:[RuCl(en)_2NO]Cl_2など数種類のニトロシルルテニウム錯体においてニトロプルシドと同様の準安定状態が生成することを見出した.
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Research Products
(1 results)