1993 Fiscal Year Annual Research Report
有機光伝導体の低速電子励起による真空紫外発光スペクトル
Project/Area Number |
05453055
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐藤 直樹 京都大学, 化学研究所, 教授 (10170771)
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Keywords | 有機光伝導体 / 低速電子 / 真空紫外光 / 発光スペクトル / 空準位 / 電子構造 / 逆光電子分光 |
Research Abstract |
有機光伝導体の探索や物性発現機構の解明のため、既知情報の少なくない価電子構造に加えて新規に空準位の構造を直接的に観測することが本研究の目的である。今年度は、真空中で低速の単色エネルギー電子を固体(薄膜)試料に照射し、低い空準位への電子の緩和に伴う真空紫外発光を測定する装置の設計・製作に集中した。 装置の設計に当たり、無機半導体の逆光電子分光測定や真空紫外光の強度測定に関しそれぞれ広島大学理学部や分子科学研究所の研究者に助言を求め、紫外光電子放出に比べ10^<-5>も低い検出効率を考慮して、Johnson型電子銃の改良による高輝度電子銃と高感度光検出系の装備を図った。また従来の経験を生かし、測定対象の有機物に不可避な試料損傷を極力軽滅するように工夫を凝らした。なお、本補助金の交付申請時には既存の超高真空紫外光電子分光装置を拡張して測定系を構成する予定であったが、要件の満足に加え性能や操作性の向上を意図して、他の研究費も投入しつつ新設に匹敵する再構築を考えながら目的達成に至る測定装置の製作に及んだ。 ただし、平成6年度研究計画調書(継続)にも記したが、本装置の部品加工等を発注すべく交付申請時に予備交渉中だった業者が不況下で廃業に至ったため、高い技術水準を満たす別の業者を探し、改めて技術・予算折衝から始めなければならなかったので、当初の計画より三か月ほど実施状況が遅れてしまった。 本報告書提出時点において、測定室、電子銃格納機構、試料調製室、試料搬送機構、真空系、検出系からなる装置の最終的な組立て段階にあり、測定系全体の調整や性能評価は次年度に繰越す。有機物専用を期しての試料冷却、低エネルギー光同時照射や入射電子線の角度依存性測定を可能とする機能など本装置の特長についても、高配向性黒鉛や代表的な有機光伝導体を標準的試料としてその発光スペクトルを実測しつつ確認する計画である。
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