Research Abstract |
本年度は,まず,電極反応過程における電極表面のin situ動的観測を可能にし,複雑な固液界面現象を原子,分子レベルで解析することを目的として,雰囲気制御型液中原子間力顕微鏡(AFM)を開発,導入した。 本原子間力顕微鏡は,ステンレス製の真空チャンバー内に設置されているため,10^<-8>Torrの高真空中での観測が可能となった。また,アルゴンガスを導入して,不活性ガス雰囲気下での液中測定ができるため,無酸素下における電極反応過程の観測が可能となり,金属の電解析出初期過程や腐食初期過程の観測が可能になった。本顕微鏡は,XY方向分解能が1nm,Z方向分解能が0.1nmと非常に高分解能でありながら,XY走査範囲は最大10μmと広域測定も可能であるなど,特に電極反応過程の原子,分子レベルでの観測を目的として設計されたものである。 次に,AFM観測用の金,白金,及びパラジウム電極を製作し,まず,これらの電極を用いて塩化カリウム及び塩酸支持電解質中でサイクリックボルタンメトリー測定を行って,各々の電極の電気化学的挙動の解析を行った。さらに,本装置を用いて,酸化及び還元雰囲気下での各種電極表面のキャラクタリゼーションを行った結果,特に,パラジウム電極では,電極表面のパラジウム粒子の配列が酸化還元により特異的な挙動を可逆的に示すことを見いだした。現在,これら電極上への各種金属の電解析出初期過程の動的観察を行っている。 さらに,ITO光透過性電極上に電解重合させたポリピロール薄膜の観測を行った。無置換及び長鎖アルキル基置換ピロールポリマーの表面観察結果から,極性の高いITOガラス表面に対してピロールの-NII部分が結合し,長鎖アルキル基が比較的規則的に配列している様子を観測した。
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