1994 Fiscal Year Annual Research Report
植物根の酸性フォスファターゼ分泌能を利用した燐資源の効率的循環利用法の開発
Project/Area Number |
05453155
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
但野 利秋 北海道大学, 農学部, 教授 (40001440)
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Keywords | 分泌性酸性フォスファターゼ / ル-ピン / 根圏 / 酸性フォスファターゼの分泌部位 / 分泌性酸性フォスファターゼの合成部位 / 燐欠乏 / 分泌性酸性フォスファターゼの種間差異 |
Research Abstract |
(1)北海道中央部の耕地、牧草地および野草地10カ所から9種の作物23点、2種の牧草2点および3種の野草5点の根を採取して、根圏および非根圏の酸性フォスファターゼ活性を測定した。根圏の酸性フォスファターゼ活性は非根圏より1.1-26.8倍、平均で6.6倍高く、根から分泌される酸性フォスファターゼが極めて多いと考えられた。(2)これまでに調べた植物中で酸性フォスファターゼ分泌能が最も高いル-ピンについて、これを低リン条件で生育させた場合の根における酸性フォスファターゼの分泌部位を検討した。その結果、酸性フォスファターゼは根の全部位から分泌されることが確認された。(3)抗分泌性酸性フォスファターゼポリクローナル抗体を作成し、それを用いて分泌性酸性フォスファターゼの合成誘導部位と-P処理開始後の根におけるこの酵素量の経時的変化を調べた。この酵素の合成誘導部位は主に根の表皮細胞と表皮近傍の皮層細胞であると考えられ、それらより内層の皮層細胞でも合成がある程度誘導され、細胞外に分泌された後に細胞間隙を経由して根組織外に分泌されると理解された。本酵素の合成誘導は-P処理開始後2日以内に開始され、それに引き続いて原形質膜における分泌機構が構築され、分泌機構の構築後には本酵素の分泌が極めて効率よく行われると考えられた。分泌機構の構築には約5日間を必要とした。(4)培地中にAIが共存してもル-ピンの根における本酵素の合成が阻害されることはなく、逆にAIの共存によってリン欠乏がより早く進行するために本酵素の合成が促進された。なお、ル-ピンはAI耐性が高い植物であるので、AI耐性が低い植物でも同じ事が起こるか否かについてさらに研究を必要とする。(5)ル-ピンとトマトの根から分泌される酸性フォスファターゼを精製して両酵素の特性を比較した。両酵素は分子量、pH反応性、基質特異性、AIによる活性阻害度ともに異なり、さらに単位根重当たりの分泌活性もトマトでル-ピンの約1/3であった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Tadano,T: "Secretion of acid phosphatase by the roots of crop plants under phosphorusdeficient conditions and some properties of the enzyme secreted by lupin roots." Plant and Soil. 155/156. 95-98 (1993)
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[Publications] Shinano,T: "^<14>C-Allocation of ^<14>C-compounds introduced to a leaf to carbon and nitrogen components in rice and soybean during ripening." Soil Science and Plant Nutrition. 40. 199-209 (1994)
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[Publications] Shinano,T: "Comparison of root growth and nitrogen absorbing ability between Gramineae and Leguminosae during the vegetative stage." Soil Science and Plant Nutrition. 40. 485-495 (1994)
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[Publications] Osaki,M.: "^<14>C-Behavior of ^<14>C-[U]-sucrose,^<14>C-[U]-asparagin,and ^<14>C-[U]-serine introduced to the flag leaf of rice and sorghum plants during ripening." Soil Science and Plant Nutrition. 40. 637-646 (1994)
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[Publications] 但野 利秋: "低pH条件下における植物と土壌の相互作用(共著)" 博友社, 236 (1994)