1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05453164
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
今井 邦雄 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (80109313)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 興亜 名古屋大学, 農学部, 教授 (50023411)
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Keywords | 蚕 / 卵休眠 / 休眠ホルモン / 食道下神経節 / 休眠誘導活性物質 |
Research Abstract |
本研究では、まず、物質的基盤を得るために、休眠ホルモン(DH)およびDH-mRNAにコードされていた食道下神経節ペプチド(SGNP)類を化学合成した。ついで、得られた合成標品を用い、高感度三次元検出器付HPLCによるDHおよびSGNP類の高感度分析法を確立すると共に、抗DH抗体を作成して免疫的超高感度DH検出法を確立した。そこで、本手法を適用してSG抽出物を精査したところ、蚕体内にSGNP類が実際に存在することを発見した。SGNP類はDH活性を示さず、生体内では全く別の生理的役割を担っている可能性が大きい。一方、上記手法と生物試験を用い、雄蚕蛾頭部の休眠誘導活性物質を検索した。雄蚕蛾頭部には以前からDH(あるいは休眠誘導活性物質)の存在が知られ、その有機溶媒抽出物がDH精製の出発物質とされていたが、単離には至っていない。材料を蛹SGとするとDHは水抽出され、これが単離、構造決定に至っている。今回は蚕蛾頭部の有機溶媒に抽出可能な活性物質を得て、その構造を明らかにすると共に、材料による活性物質の物理化学的性質の差異の原因解明を目指した。新規に集めた生蚕蛾頭部からの有機溶媒抽出物は複数の活性物質を含んでいたが、これまでに、その内の一つをほぼ純粋に精製できた。この活性物質のHPLC的挙動は蛹SGのDHとは明らかに異なる。つぎに、卵内に休眠誘導活性物質が存在するか否かを検索した。家蚕の卵を集め、種々の抽出法を検討した結果、明らかに休眠誘導活性物質が存在することを発見した。 以上のように、本研究ではDHとSGNP類の化学合成と分離分析、検出法を確立できた。ついで、この手法を用い、SGNP類が蚕体内に存在することを証明した。さらに、この手法と生物活性試験を適用して、雄蚕蛾頭部及び休眠卵内に休眠誘導活性物質が存在することを証明すると共に一部の活性物質を単離する事に成功した。今後、これらの活性物質本体の構造を明らかにし、卵休眠の誘導、維持、覚醒の機構を分子レベルで解明する予定である。
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Research Products
(1 results)