Research Abstract |
1.石川,福井,京都,富山の各県においてアザミ属植物を採取し,形態,染色体数を検討した.この結果,これまでカガノアザミと同定されていた種には2倍体と4倍体の集団があることがわかった.前者は,福井県嶺北以東に分布し,ヤマトアザミテントウの食草としては不適である.これに対して,後者は福井県嶺南から京都府北桑田郡にかけて分布し,ヤマトアザミテントウの食草として利用される.ホッコクアザミは従来ハクサンアザミの1変種とされていたが,再検討の結果,独立種とみなすべきとの結論に達した. 2.京都,滋賀,福井,石川,富山の各府県の10地点(湯涌,犀川ダム)から採集したヤマトアザミテントウ(Epilachnaniponica Lewis)の遺伝的変異を,薄層水平アクリルアミドゲル法によりアロザイム解析し,同様の方法で分析した京都府,滋賀県,福井県,富山県の8地点の集団とともに検討した.その結果から(1)使用した16酵素のうち10酵素12遺伝子座を用いて,集団間の遺伝的距離を計算し系統樹を作成し,(2)10集団が,東と西の集団群とその中間の2集団に分かれていることが判明した. 3.石川県を中心とする北陸,中部地方各地からキク科アザミ族の8属44種の頭花を採取し,室内で頭花を食害する昆虫類を羽化させた.これまでにミバエ4種,ゾウムシ(少なくとも)2種を確認した.アザミの系統関係,開花のフェノロジーと頭花を利用する昆虫相の関係を検討した結果から,(1)アザミ属アザミ節は,全般に昆虫相が豊富であるが,同属の他節や他属には昆虫相が貧弱であること,(2)アザミ節の種にもよく利用される種とそうでないものがあること,(3)ノアザミ(晩春から初夏に咲く.それ以外のアザミは秋に咲く)には他のアザミにはつかないゾウムシが見られることが明らかになった.
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