Research Abstract |
1.アザミ類の調査 (1)ホッコクアザミの再検討:石川,福井,京都,富山の各県において,アザミ属植物3種(ホッコクアザミ,カガノアザミ,ハクサンアザミ)を採取し,生息環境,形態変異,染色体数を比較検討した.結果はすでに報文として公表した.(2)「ニセカガアザミ(仮称)」の検討:これまでカガノアザミと同定されていた種には,2倍体と4倍体の集団があることがわかった.前者は,福井県嶺北以東に分布し,ヤマトアザミテントウの食草としては不適である.これに対して,後者は福井県嶺南から京都府北桑田郡にかけて分布し,ヤマトアザミテントウの食草として利用される.これは「ニセカガアザミ」と独立種とみなすべきとの結論に達し,報文を準備中である.(3)葉緑体DNAの制限酵素切断片長多型分析による系統関係の解析:実験材料としてアザミ属植物17種とオヤマボクチを用い,8種類の制限酵素を試用した.データは現在解析中である. 2.ヤマトアザミテントウの調査 (1)遺伝変異:ヤマトアザミテントウ(島根,鳥取,京都,滋賀,石川,秋田,北海道の7地域集団から採集)と,エゾアザミテントウとルイヨウマダラテントウ(いずれも北海道から採取)を薄層水平アクリルアミドゲル法によりアロザイム解析し,集団間の遺伝的距離を計算するとともに,系統樹を作成した.(2)形態変異:島根県か北海道にいたる8地域集団から採取したヤマトアザミテントウを材料として,個体あたり13形質を万能投影機を用いて計測し,SASによる主成分分析,判別分析,正規性検定などした.(3)食草選好性の変異:本州日本海側の5地点(島根,鳥取,京都,福井,石川)のヤマトアザミテントウと,ほぼ同地域から採取した7種類のアザミを用いて食草選好性実験を室内でおこなった.石川県湯湧の集団と京都府芦生の集団は,カガノアザミなどの受容性をはじめとして食草選好性に大きな差が認められた.
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