Research Abstract |
本年度,阿部は長崎県対馬厳原,福岡県英彦山,浮羽町,久留米市善導寺町,熊本県八代市,芦北町,人吉市,鹿児島県鹿児島市,種子島西之表市,屋久島安房,山口県豊北町,広島県広島市,戸河内町,比和町,和歌山県古座川町,新潟県佐渡両津市等においてモグラのサンプル45頭を採集し,合わせて環境調査の一環として土壌硬度調査,土壌サンプル採集等を行った.採集したモグラは現地にて標本作製,肝臓,筋肉等の組織標本を採集した.その後,研究室にて頭骨標本をクリーニングした後,前年度採集分を含めて,そのサイズの地理的変異と環境要素の関係について重回帰分析等により解析を行った.一方,分担者岡本は,モグラの組織標本から所定の方法によりmtDNAを取り出して塩基配列を決定し,その変異からモグラの地域個体群の関係,種間の関係について解析を行った.その結果,どのモグラでも体サイズの地理的変異が生息地面積とは正の相関を示したが、気温や降雨量との関係は種によって異なった反応が見られた。すなわち、コウベモグラのサイズは平均最低気温とは負の、アズマモグラでは年平均気温と正の相関がみられた。また、土壌硬度は体サイズの変異に関係しないことがわかった。mtDNAの塩基配列の分析結果、日本のモグラ類のこれまでの分類(Abe,1967)が基本的に正しいこと、種内では幾つかの地域個体群間に変異があることが明らかになった。
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