1994 Fiscal Year Annual Research Report
低人口増加率を維持するヒト個体群の長期間の生存機構の解明
Project/Area Number |
05454033
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 柳太郎 東京大学, 医学部(医), 教授 (60010071)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳永 勝士 日本赤十字社中央血液センター研究部研究一課, 課長
赤澤 威 総合研究資料館, 教授 (70013753)
中澤 港 東京大学, 医学部(医), 助手 (40251227)
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Keywords | シミュレーション / ヒト個体群 / パプアニューギニア / 長期間人口変動 / 環境収容力 / 遺伝子伝達モデル |
Research Abstract |
:シミュレーションモデルを用いたアプローチによってヒト個体群の長期間の生存機構を解明するために、平成6年度は、まず婚姻規制の遺伝子伝達への効果を検証するモデルを構築した。一夫一妻と一夫多妻、クラン外婚制の有無、夫婦の年齢差の程度、といった婚姻規制のレベルをさまざまに設定することによって、小集団での婚姻成功確率が変化し、再生産力に違いがあらわれ、結果として遺伝的構成に違いが出てくることを明らかにした。総体としてみれば、婚姻規制が厳しいほど出生力の平均は低下しながらも分散は大きくなるが、それだけでは遺伝的多様性の維持への影響が小さいことを明らかにした。また、一夫多妻が許されると遺伝的多様性は失われやすくなることも明らかとなった。次いで、このモデルと、前年度に構築した二つのモデルを組み合わせることによって、パプアニューギニアの低地に居住するギデラと呼ばれる個体群について適用するための総合モデルを作成した。ギデラについての人口学・遺伝学的なデータがとれている項目はモデル上でその値を固定し、データのない項目についてはパラメータを何通りにも変えて条件検討を行った。この統合モデルはC言語で記述し、本研究助成金で購入したUNIXワークステーション上で運用した。その結果、既に分析済みのマラリアによる淘汰圧の地域差が数百年間変わらなかったと仮定し、マラリア罹患率の低い中央部からマラリア罹患率の高い周辺部への過去における移住の開始時期、さらには地域差を含む集団全体としての現実の遺伝特性がモデル上で成立する可能性を明らかとし、一般化させるための検討を行った。
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