1993 Fiscal Year Annual Research Report
耳石微細構造の解析によるニホンウナギの初期生態の解明
Project/Area Number |
05454092
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塚本 勝巳 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (10090474)
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Keywords | 耳石微細構造 / ニホンウナギ / 初期生態 / 産卵生態 / 資源変動 / 産卵時期 / 孵化リング / 環境水温 |
Research Abstract |
資源変動の著しいウナギの産卵・初期生態を解明することを目的として,本種の耳石微細構造の観察を行った。 1.1991年夏,マリアナ諸島沖のウナギ産卵場(15°N,140°E)付近において,採集されたニホンウナギAnguilla japonicaのレプトケファルス76尾の耳石日周輪から各個体毎に孵化日を求めたところ、その分布は6月初旬と中旬にそれぞれ孵化のピークをもつ2山に分れた。十分に広い海域から採集したサンプルをランダムに抽出して得られた結果であるので,これは同海域で起こった親ウナギの産卵が連続的に起こっているのではなく,同期的・間欠的に行われていることを示唆している。今回の産卵間隔はおよそ2週間であった。2.耳石中心部の微細構造を天然シラスウナギと人工孵化仔魚で比較すると,両者共に耳石中心部に孵化チェックと推定されるチェックリングが認められたが,それらの平均リング直径は前者で大きく(約12μm),後者で小さかった(約9μm)。これは,天然では人工孵化の場合(約40時間)よりかなり長い胚期を持つことを示唆する。また一方でチェックの内側には,シラスでは1〜数本の胚期輪がみえる。以上より,人工孵化時の水温(約20〜23℃)はかなり高いため,発生が早く進みすぎている可能性もある。3.耳石日周輪の本数と輪紋間隔の解析によると,初期の成長はこれまで全長40mm以上のレプトケファルスについて考えられていたのと同様に,直線的であることがわかった。しかし,その成長速度はこれまで得られた値(0.56mm/d)よりかなり大きく(0.96mm/d),ウナギ孵化後1ケ月以内に急激に成長する可能性が示唆された。ただし,今回解析した35mm以下のレプトケファルスの耳石は予想に反して観察しにくく,これ以上のレプトケファルスの耳石日周輪より不明瞭であった。このため,今回の解析には齢査定誤差が多少含まれている。しかしこれは上記結論が変る程の誤差ではない。
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