1993 Fiscal Year Annual Research Report
活性酸素による心筋細胞の障害とその防御に関する薬理学的研究
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05454145
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
安孫子 保 旭川医科大学, 医学部・薬理学講座, 教授 (90041821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
矢沢 和人 旭川医科大学, 医学部, 助手 (90212274)
橋爪 裕子 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00154021)
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Keywords | 活性酸素 / 心筋 / リドカイン |
Research Abstract |
本実験の目的は活性酸素が心筋細胞の脂質過酸化をおこし、心機能を障害するのか否か、また、Naチャネルの遮断薬であるリドカインが活性酸素による心筋の障害を軽減するか否かを知ることである。 実験にはランゲンドルフ式に潅流し、ペーシングによって拍動数を一定にしたラットの心臓を用いた。心臓の潅流液中に活性酸素の一つである過酸化水素(600 uM)を投与すると、心室内の収縮期圧は低下し、拡張期圧は上昇した。さらに過酸化水素投与によって、心筋組織のATPならびにCrP含量は低下し、脂質過酸化の指標であるマロンジアルデヒド(MDA)の組織内含量は増加した。過酸化水素によるこれらの変化はすべてリドカイン(50-200 uM)の投与によって著明に減少した。また、心筋外面に光プローブを装着して、フェリルミオグロビン(Ferry-Mb)のレベルを測定したところ、過酸化水素によってFerry-Mbのレベルが増加し、リドカインは過酸化水素によって増加するFerry-Mbのレベルの上昇に何らの影響をも与えなかった。また、試験管内実験によって、リドカインは過酸化水素そのものに作用して、過酸化水素濃度の低下をおこすことはなかった。さらに、実験に用いたリドカインの濃度では、正常心臓の機能には障害を与えなかった。 以上の実験結果から、過酸化水素の心筋に対する障害作用は、リドカインによって著明に軽減されることが分かった。過酸化水素は、生体組織内に存在する鉄イオンによってヒドロキシラジカルを発生し、このヒドロキシラジカルが心筋細胞膜のNaチャネルを活性化することによって心筋膜の脂質過酸化をおこし、このため心筋に障害を与えることが推測された。また、リドカインの作用は過酸化水素またはヒドロキシラジカルに直接作用するのではなく、おそらくはヒドロキシラジカルによる心筋細胞膜の脂質過酸化を抑制することであると思われる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] A.Hara,H.Matsumura and Y.Abiko: "Lidocaine attenuates both mechanical and metabolic changes induced by hydrogen peroxide in the rat heart" American Journal of Physiology. 265. H1478-H1485 (1993)
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[Publications] 原明義・安孫子保: "Hydrogen peroxide投与によるラット心筋障害におよぼす低酸素潅流の抑制効果" 日本薬理学雑誌. 103. 6 (1994)