1993 Fiscal Year Annual Research Report
イミペネムに特異的な透過孔を形成する緑膿菌ポーリンOprD2の透過特性
Project/Area Number |
05454195
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
中江 太治 東海大学, 医学部, 教授 (50102851)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 純子 東海大学, 医学部, 研究員 (70167063)
米山 裕 東海大学, 医学部, 助手 (10220774)
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Keywords | 外膜 / ポーリン / Pseudomonas / OprD2 / イミペネム / 薬剤耐性 / 脂質平面膜 / チャンネル |
Research Abstract |
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は一般に抗生物質に対して自然耐性である。ところが低分子カルバペネム(イミペネム)はこの菌に対して強い抗菌活性を示す。本研究ではこのイミペネムの抗菌活性に係わる外膜透過性の研究を行った。緑膿菌外膜からイミペネム透過性に係わると考えられているproteinD2(OprD2)の高純度に精製しておき、これを人工平面脂質二重膜に再構成すると塩溶液の中でチャンネル活性(電気伝導度)を測定することができる。この方法によってOprD2の単一分子のチャンネル活性をdiphytanoyl phosphatidyl choline(DDPC)膜を用いて1MNaCl中で測定すると訳40pS(pico siemens)の伝導度を示した。この伝導度を示すような大きさのチャンネルを会してはとうていイミペネムが透過できるとは考えられない。そこでこのOprD2チャンネルの大きさを変化させるような物質を検索したところDPPC膜に少量(約5%)のリポ多糖(LSP)を添加すると効果があることがわかった。DPPC+LPSの膜を用いた1MNaCl中でのOprD2のチャンネル活性は約40pSであると計算された。この大きさの孔を介してイミペネムは透過するものと解釈できる。OprD2がDPPC膜とDPPC+LPS膜において各々に約40pSと400pS伝導度を示したということは前者はOprD2が閉の状態に、また後者は開の状態にあるものと解釈できる。それではOprD2チャンネルは開閉する機能が備わっているかという疑問が残る。DPPC+LPS膜にOprD2を組み込み電極の極性及び電圧(ポテンシャル)を変化させる実験を行なうと負の電圧をかけたときにOprD2チャンネルは開の状態(つまり伝導度が大である)が長続きするか、もしくは開の状態の頻度が大であることが明らかとなった。このようにイミペネムの透過チャンネルを形成するOprD2は開閉機構を備えたチャンネルであるという興味ある知見が得られた。別の研究としてはイミペネム耐性菌ではOprD2蛋白が欠損するメカニズムの研究を行った。その結果イミペネム存在下ではOprD2遺伝子に欠失変異が起こることが明らかとなった。
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