1994 Fiscal Year Annual Research Report
メチル水銀汚染地域住民の老化過程とその規定因子に関する研究
Project/Area Number |
05454229
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
二塚 信 熊本大学, 医学部, 教授 (80040195)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永野 惠 熊本大学, 医学部, 助手 (10136723)
北野 隆雄 熊本大学, 医学部, 助手 (50214804)
稲岡 司 熊本大学, 医学部, 講師 (60176386)
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Keywords | メチル水銀 / 老化 / 健康影響 / 疫学 / 多変量解析 |
Research Abstract |
メチル水銀の地域住民に対する後影響を追跡観察し、併せてその健康管理を行うために、1984年以来水俣病患者多発地区A町の40歳以上全人口約3,200名を対象に、年1回の総合的な健康調査を実施してきている。本研究では、住民の老化の特徴を明かにするために、その定量的尺度として生物学的年齢の推定を行った。このテーマを取り上げたのは水俣病患者の生存率が60歳代で地域住民より有意に低いこと、水俣病の中核症状が加齢により修飾されることによる。 生物学的年齢の推定には、古川らの方法を参考に、私共が実施している健康調査の測定値について線形回帰分析を行い、回帰式を求め、暦年齢との関連性を検討した。 その結果、生物学的年齢の説明因子として、聴力(6,000HZ及び8,000HZの平均値)、肺活量(1秒率)、眼底動脉硬化度(シャイエ分類)、血清総コレステロール、血清LDHがとりあげられ、Y(生物学的年齢)=54.4+0.218×聴力-0.0414×FEV_1+0.055×T-CHOL+0.028×LDH+11.3×シャイエの推定式が得られた。 暦年齢と生物学的年齢との間には、いわゆる健康者群(健康調査で異常が認められなかった群)では、漁村部の男性にのみ有意差、つまり加齢の促進がみられた。そこで、メチル水銀の健康影響の可能性を含む神経内科的所見との関係を検討したところ、所見の有無による差は認められなかった。また、少数ながら水俣病認定患者では生物学的年齢のばらつきが大きく、一定の傾向はみられなかった。これらのことから、漁村地区男性の加齢促進は漁船のディーゼルエンジンによる騒音(80db(A)以上)の曝露による高周波帯域の聴力低下の関与が示唆され、メチル水銀の摂取による直接的加齢影響を肯定する結果は得られなかった。
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