1993 Fiscal Year Annual Research Report
ストレスタンパク質単クローン抗体による損傷の法医学診断と評価
Project/Area Number |
05454238
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
辻 力 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (50073680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 章彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60136611)
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Keywords | ストレスタンパク / 損 傷 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
受傷(ストレス付加)後に発現するストレスタンパク質を指標とする免疫組織学的検査により、損傷を成起させた外力の侵襲度、損傷の範囲、受傷後の経過時間等を半定量的に診断・評価することを目的として実験を行った。 まず、ストレッサーで誘導させたストレスタンパク質の精製を本研究補助金による日立工機CR-20型高速冷却遠心器等で行い、それに対するモノクローナル抗体の作製を試みているが、未だそれを得るに至っていない。 したがって、本研究の目的に沿い、市販の抗体HSP-70(生体内に常在するストレスタンパクに対する抗体)およびHPS-72(ストレス付加時に発現するタンパクに対する抗体)を用い、剖検時採取した種々損傷(刺・切創、圧迫創、打撲傷)部位の皮膚について検討を行った結果は次の通りである。 外力の侵襲度:刺・切創ではその判断が困難であるが、今回の検討結果からも評価することは不可能であった。圧迫創では、成人の絞・扼頸部皮膚は勿論のこと、乳幼児(生後5ヶ月)の腹臥位における同人頭部重量での鼻口圧迫部皮膚でも、表面(絞頸の場合は残存表皮)および汗腺上皮がHSP-72と明瞭に反応し、また打撲傷でも、皮下出血部皮膚は勿論のこと皮内出血部皮膚の表皮、汗腺上皮にも反応を認めた。さらに、表皮に比して汗腺上皮の反応性が強い傾向がみられた。 損傷の範囲:いずれの損傷においても、外力の直接作用部位の表皮および汗腺上皮は著名な反応を示した(但し、刺・切創の創面に接する微薄層は反応しなかった)。同所から離れるに従い反応性は漸次減少し、今回の検討では、その反応陽性範囲は1〜1.5cmを算した。 受傷後の経過時間:本検討では、受傷15日目の損傷で陽性反応を示したが、1ヶ月後では反応しなかった。 以上、今回はヒト死体上の損傷に検討を加えたが、受傷後の経過時間等を正確に検討するため、現在、動物実験を企画している。
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