1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05454263
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
田中 勵作 (財)東京都神経科学総合研究所, 病態神経生理学研究部門, 参事研究員 (20003626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鏡原 康裕 (財)東京都神経科学総合研究所, 病態神経生理学研究部門, 兼務研究員
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Keywords | 痙縮 / 脊髄疾患 / 足背屈運動 / H反射 / 相反性抑制 / Ia抑制 / 前脛骨筋 / ヒラメ筋 |
Research Abstract |
痙縮症状の発現機構を筋伸張反応および相反性神経支配(主動筋促通と相反性抑制)に関わる脊髄内神経回路網に即して解析し、随意運動実行中に現れる運動障害にたいするこれらの回路網の関わり方を検討している。被験者に反応時間試験をベースとするステップ型指標追跡法により随意性急速足背屈運動課題を設定した。これにH反射法を組み込んで、運動開始前後における前脛骨筋(主動筋)およびヒラメ筋(拮抗筋)を支配する運動ニューロンプールの興奮性変化、更に屈筋から伸筋に向かうIa抑制回路の興奮性変化の時間経過を調べた。既に調べた健康人の運動開始に伴う相反性抑制の動態は、第1期(主動筋の随意筋電図活動開始にほぼ同期して始まる弱い抑制相)、第2期(筋電図開始後50-100msに見られる回復相、足背屈運動がもたらす受動的な下腿伸筋の伸展による筋伸張反射効果)、及び第3期(100-300msの強力な抑制相)である。 今年度は痙縮患者30例について実験を行った。このうち特に脊髄病変由来の痙縮患者17名について分析が終了した。結果は以下の通りである。1)第1期の抑制が全例で消失した。2)第2期の回復相が4例を除いて過剰な促通反応へと転換した。3)相反性抑制の実効的要素である「第2の抑制」が3例を除いて著明に低下した。4)筋電図開始直後におけるIa抑制回路の活動(運動コマンドによる直接促通効果)については多数例で消失した。健康人に匹敵する促通が認められた少数例については必ずしも重症度に関係を示さなかった。痙縮による運動障害は主動筋収縮に対する拮抗筋の過剰な伸張反射の結果として現れるが、その要因として2シナプス性Ia抑制回路を介する相反性抑制機能の低下が関与している、と考察した。なお本結果の一部を第23回日本脳波筋電図学会(鹿児島)において発表した。
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