1993 Fiscal Year Annual Research Report
サイトカインである腫瘍壊死因子は冠動脈粥腫の破裂・血栓形成の成因として重要である。
Project/Area Number |
05454269
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤原 久義 京都大学, 医学部, 講師 (80115930)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福本 学 京都大学, 医学部, 助教授 (60156809)
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Keywords | サイトカイン / 腫瘍壊死因子 / 梗塞責任冠動脈 / 心筋梗塞 / 免疫組織 / PCR |
Research Abstract |
サイトカインの一種である腫瘍壊死因子(TNF)の血中レベルは急性心筋梗塞において上昇することが知られている。我々は急性心筋梗塞責任冠動脈病変の特徴である出血壊死、粥腫の破裂、マクロファージの集積という組織像が腫瘍壊死因子(TNF)関与の腫瘍組織病変と類似していることに着目し、TNFが梗塞責任冠動脈組織病変の発生に関与しているという仮説を考えた。そこでヒトおよび高脂肪食飼育ウサギの梗塞責任冠動脈組織にTNFならびにTNF遺伝子が存在するか否かを検討した。さらに心筋梗塞において上昇する血中TNFが心臓のどの細胞に由来するかも心筋組織を用いて検討した。 対象および方法:対象はヒトで急性心筋梗塞発症後4日以内に死亡し、死亡後4時間以内に剖検された10例、心筋梗塞にてbypass surgeryをうけたヒトの心耳組織5例および高脂肪食飼育ウサギ10羽の冠動脈である。上記組織の一部をPLP固定後凍結し、クリオスタットにて4μm切片を作製し、TNFに対するモノクローナル抗体を用いて酵素抗体法を行った。上記組織の残りについて固定せずに凍結し、エライザー法にてTNFを定量化した。TNF遺伝子に対するcDNAを用いてPCR法にてTNFmRNAの存在について解析した。 結果および考案:1)梗塞責任冠動脈組織にはTNFのモノクローナル抗体に対し陽性細胞が存在した。その細胞はアクチンに対する抗体陽性細胞またはマクロファージに対する抗体陽性細胞で平滑筋またはマクロファージと思われた。TNF陽性細胞は急性心筋梗塞責任冠動脈のみならず、非梗塞部の粥状動脈梗化病変部にも存在することがあった。従って、梗塞責任冠動脈病変の特異的所見とはいえず、plaque ruptureの成因の解明には今後さらに検討する必要がある。2)ヒトの心耳組織において心不全の強い例ではエライザー法にてTNFが高濃度に存在し、かつ、免疫組織学的に心筋細胞および小血管平滑筋にTNFに対するモノクローナル抗体陽性細胞がみられた。全例でPCRにてTNFmRNAの存在を確認できた。 以上より梗塞責任冠動脈病変部の平滑筋ならびにマクロファージ、および不全心の心房組織の心筋細胞および平滑筋にTNFとTNFmRNAの発現増大があり、これらは急性心筋梗塞発症のメカニズムとして重要な役割を演じていると思われる。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Hasegawa K,Fujiwara H,et al: "Ventricular expression of brain natriuretic paptide in hypertrophic cardiomyopathy." Circulation. 88. 372-380 (1993)
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[Publications] Katsuragawa M,Fujiwara H,et al: "Histologic studies in percutaneous transluminal coronary angioplasty for chromic occlusion." J Am Coll Cardiol. 21. 604-611 (1993)
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[Publications] Hasegawa K,Fujiwara H,et al: "Endothelin-1-selective receptor in the arterial intima of patients with hypertension." Hypertension. 23. (1994)