1993 Fiscal Year Annual Research Report
心筋内イオン・ホメオスタシス維持における解糖系由来ATPの役割
Project/Area Number |
05454270
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
楠岡 英雄 大阪大学, 医学部, 助教授 (00112011)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植原 敏勇 大阪大学, 医学部・附属病院, 講師 (80243202)
西村 恒彦 大阪大学, 医学部, 教授 (70237733)
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Keywords | 心筋 / 解糖系 / ATP(アデノシン3燐酸) / カルシウム・イオン / 核磁気共鳴法 / フェレット |
Research Abstract |
心筋細胞では、収縮に必要なエネルギーは主として酸化的燐酸化により供給され、細胞内イオンホメオスタシスを維持するためのエネルギーは解糖系に由来すると考えられている。本研究においては、解糖系の阻害が細胞内カルシウム・ホメオスタシスに及ぼす影響について検討した。すなわち、フェッレット摘出灌流心標本を用い、等容性左室圧を観測しつつ、ヨード酢酸、または、デオキシグルコースにて解糖系を阻害し、その際のエネルギー代謝の変動を燐NMRにより、カルシウム・ホメオスタシスの変動をフッ素NMRにより測定した。グリコーゲンの枯渇後、解糖系を阻害しても、灌流液中にグルコースが単独に基質として存在するとき以外には、心筋内には糖燐酸(Sugar phosphates;SP)は蓄積しなかった。一方、EDPの上昇はSPの蓄積が認められる時にのみ生じ、EDPとSPの間には有意な正の相関が認められた。さらに、解糖系の阻害前に基質を含まない液にて灌流しても、EDPの上昇は認められなかった。このことは、EDPの上昇は、解糖系がATPを産生できないことよりも、むしろ、心筋内のSPの蓄積により引き起こされていることを示唆した。さらに、心筋のペーシングと同期させたフッ素NMR測定により、本実験条件においては、EDPは拡張期における細胞内カルシウム・イオン濃度を正確に反映していることが明かとなった。以上の結果より、心筋細胞内のカルシウム・ホメオスタシスの維持には解糖系が産生するATPが必須ではなく、むしろ、SP自体が何らかの機序によりカルシウム・オーバーロードをもたらすことが示唆された。
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