1994 Fiscal Year Annual Research Report
放射線肺炎と肺表面活性物質との関係及び人工的肺表面活性物質の開発に関する研究
Project/Area Number |
05454303
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
高橋 正治 京都大学, 胸部疾患研究所, 教授 (00026931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芝本 雄太 京都大学, 胸部疾患研究所, 助教授 (20144719)
鈴木 康弘 京都大学, 胸部疾患研究所, 教授 (90027110)
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Keywords | 放射線肺炎 / 肺表面活性物質 / 肺サーファクタント / 気液界面活性 / 表面張力 |
Research Abstract |
肺癌放射線治療の線量制約因子である放射線肺炎、肺線維症と肺 surfactant(PS)の分泌-機能異常との関係を明らかにし、人工PSの開発とその補充療法の意義について検討した。ラットの右肺のみに種々の線量を照射したのち経時的に屠殺し、一定量の食塩水にて肺洗浄を行い、洗浄液から採取したPS(リン脂質、アポ蛋白SP-AおよびSP-B)の量的変動、表面張力を組織学的変化と対比検討した。結果:(1)5GyではPSの変動も組織学的変化も認めない、(2)15Gyではリン脂質は照射1日後から、アポ蛋白は1週後から上昇し、いずれも2週間後ピークに達したのち減少し、8週後には非照射対照の50〜60%の低値に到る。16週後にはわずかな回復傾向が見られた、(3)20Gyでも同様の変動を示すが、8週後の値は15Gyよりも低く、16週後も回復傾向は認めなかった。全体としてSP-Bの変動がSP-Aよりも顕著であった。組織学的にはPSの増加期は炎症性変化の顕著な時期に、またPSの低下期は肺胞壁や間質の肥厚、線維性変化の出現する時期に一致していた。これは照射後1〜2週の炎症期には肺胞H型上皮細胞の層状封入体が放出されてPSが一過性に上昇し、その後はII型上皮細胞のPS合成傷害による分泌量の低下があったものと考えられる。表面張力STは平衡表面張力STeq、最大表面張力STmax、最小表面張力STminともに照射群で高く、これは脂質の有効な表面吸収がなかったことを示唆している。しかし8〜16週後のSTminはわずかに回復する傾向がみられた。STeq、STmaxはSP-Bに大きく依存する。脂質として合成したliposomeに肺胞蛋白疾患者から抽出したSP-Bを加えて合成した人工PSの表面張力は十分にPS機能を有しており、人工PS開発の端緒になった。したがって、PS合成を促進するがPS分泌促進のないsteroidsに人工PSを補充することは、対症療法として意義あるものと考えられた。
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