1993 Fiscal Year Annual Research Report
急性膵炎重症化のメデイエーターに関する研究-急性膵炎重症化におけるサイトカインの役割について-
Project/Area Number |
05454356
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小川 道雄 熊本大学, 医学部, 教授 (30028691)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
緒方 健一 熊本大学, 医学部附属病院, 医員
池井 聰 熊本大学, 医学部, 講師 (90136705)
守 且孝 熊本大学, 医療技術短期大学部, 教授 (10040213)
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Keywords | 急性膵炎 / サイトカイン / 腫瘍壊死因子(TNF) / 好中球 / 多臓器不全 / セルレイン / LPS / エンドトキシン |
Research Abstract |
重症急性膵炎の死亡原因である多臓器不全の誘発するメディエータとしてのサイトカインと活性化好中球の役割について検討した。 【.encircled1.】セルレイン急性膵炎ラットの腹腔内より単離したマクロファージをLPSで刺激し、24時間 incubation した後の上清中のTNF量は、コントロールのそれに比して有意に増加した。 【.encircled2.】急性膵炎にエンドトキシン血症を合併したモデルとして、セルレインに加えてLPSをを腹腔内に投与した(Crn+LPS)ラットの、LPS投与90分後の血中TNF値は、正常ラットにLPSを投与した(Co+LPS)ラットに比して、有意に高値を示した。また(Crn+LPS)ラットは(Co+LPS)ラットに比して、病理学的に肝臓の限局性壊死、炎症細胞浸潤などのより強い肝組織障害を示した。また血液生化学検査において、より著明な肝機能障害を認めた。臓器障害は肝以外の肺、心、腎などの他の臓器にも発生した。さらに(Co+LPS)ラットの24時間生存率は80%であったのに対して、(Crn+LPS)ラットでは50%であった。 このように急性膵炎にエンドトキシン血症を合併すると、エンドトキシン血症のみの場合に比して、誘導されるサイトカイン量は増加し、臓器障害が著明となり、生存率が低下するという結果を得た。このことより 【.encircled1.】急性膵炎においてはたとえ軽症であっても、腹腔内マクロファージはprimingされた状態に有る。 【.encircled2.】この状態の時エンドトキシン血症などの新たな刺激が加わると、マクロファージは容易に活性化され、大量のサイトカインを産生し、引続き多臓器不全が惹起される。 この結果は、当初の目的である「急性膵炎の重症化におけるサイトカインの役割」の一端を明かにしたものである。
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[Publications] Sameshima,H: "The role of tumor necrosis factor in the aggravation of cerulein-induced pancreatitis in rats" Int.J.Pancreatol.14. 107-115 (1993)
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[Publications] Yamaguchi.Y: "Acinar cell loss following ductligation in the rat pancreas:Necrosis or atrophy?" Gastroentrology. 105. 1262-1263 (1993)
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[Publications] Yamaguchi Y: "In situ kinetics of acinor,duct,and inflammatory cells duct ligation-induced pancreatitis in rats." Gastroentrology. 104. 1948-1506 (1993)
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[Publications] 小川道雄: "急性膵炎" 外科治療. 68. 926-930 (1993)
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[Publications] 池井聰: "急性膵炎重症化因子-サイトカイン-" 胆と膵. 14. 926-930 (1993)
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[Publications] 池井聰: "急性膵炎とMOF -特にサイトカインと好中球の役割について-" 日本腹部救急医学会雑誌. 13. 673-678 (1993)
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[Publications] 小川道雄: "急性膵炎と好中球エラスターゼ" 急性膵炎 -重症化機序とその対策 斉藤洋一、松野正紀編, 13-23 (1993)
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[Publications] 池井聰: "急性膵炎重症化のメカニズム" 21世紀を目指し羽ばたく消化器病学 原田尚編, 68-70 (1993)