1994 Fiscal Year Annual Research Report
急性膵炎重症化のメデイエーターに関する研究-急性膵炎重症化におけるサイトカインの役割について-
Project/Area Number |
05454356
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
小川 道雄 熊本大学, 医学部, 教授 (30028691)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
別府 透 熊本大学, 医学部, 医員
江上 寛 熊本大学, 医学部, 助手 (00264284)
片渕 茂 熊本大学, 医学部, 助手 (50233747)
守 且孝 熊本大学, 医療短期大学部, 教授 (10040213)
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Keywords | 急性膵炎 / サイトカイン / 腫瘍壊死因子(TNF) / 活性化好中球 / CINC / LPS / 多臓器不全 / ARDS |
Research Abstract |
重症急性膵炎に伴う臓器障害、特に重症急性膵炎に合併することの多いARDS等の肺機能障害の発生におけるサイトカインの作用について検討した。 (1)セルレイン急性膵炎ラット(Crn)群、急性膵炎にエンドトキシン血症を合併したモデルとして、Crnに加えてLPSを投与した(Crn+LPS)群、正常ラットにLPSを投与した(Co+LPS)群ラットの3群を作成した。 (2)血中TNF-αはCrn+LPS群がCo+LPSに比して有意に高値となった。Cr群は測定感度以下であった。 (3)BALFより採取した肺胞マクロファージのTNF-α産生能は、Crn+LPS群はCn群及びCo+LPS群に比して有意に亢進していた。 (4)肺の病理組織学的所見:Cn+LPS群はCn群及びCo+LPS群に比較して、肺胞への好中球浸潤の増加傾向が認められた。 (5)肺組織中のミエロペルオキシダーゼ活性は、Crn+LPS群がCo+LPS群に比して有意に増加していた。Crn群では活性はほとんど認められなかった。 (5)in site NBT (nitro blue tetrazolium)法による肺胞マクロファージのスーパーオキサイド産生能は、Cn+LPS群はCn群及びCo+LPS群に比較してformazanの取り込みが多く、Cn+LPS群の肺胞マクロファージは活性酸素産生能が亢進していることが示された。 今回の研究で、急性膵炎にエンドトキシン血症を合併すると肺胞マクロファージのTNF-αの産生亢進が認められ、さらに病理組織学的に好中球の肺への集積が認められた。 急性膵炎にエンドトキシン血症が合併すると遠隔臓器である肺局所においても過剰のサイトカインが産生され、この作用によって肺に好中球が集積し、これが活性化されることによって肺の組織障害発生に関与していることを明らかにした。 この結果は、当初の目的である「急性膵炎の重症化におけるサイトカインの役割」の一端を明かにしたものである。
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[Publications] 小川道雄: "急性膵炎の病態と重症化機序" 外科診療. 36. 1209-1215 (1994)
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[Publications] 小川道雄: "急性膵炎の緊急診断" 綜合臨牀. 43. 263-266 (1994)
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[Publications] 小川道雄: "膵癌と急性膵炎" 消化器外科. 17. 362-377 (1994)
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[Publications] 小川道雄: "サイトカインによる好中球の活性化と臓器障害" 医学のあゆみ. 169. 845-849 (1994)
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[Publications] 池井 聰: "急性膵炎 重症化因子とその機序" 外科治療. 71. 631-638 (1994)
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[Publications] 池井 聰: "急性膵炎の発生機序" 診断と医療. 82. 192-197 (1994)
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[Publications] 小川道雄: "急性膵炎に伴う多臓器不全にサイトカインは関与するか" FOCUS消化器(1) 鎌田武信、小林健一編, 3 (1994)
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[Publications] 小川道雄: "急性膵炎の重症度判定と治療方針" FOCUS消化器(2) 鎌田武信、房本英之編, 7 (1994)