1995 Fiscal Year Annual Research Report
人工赤血球(ネオレッドセル)の臨床応用に関する研究
Project/Area Number |
05454359
|
Research Institution | Fukushima Medical College |
Principal Investigator |
薄場 彰 福島県立医科大学, 医学部, 講師 (00145608)
|
Keywords | 人工赤血球 / ネオレッドセル / 酸素運搬 / 循環動態 / ショック / 対外循環 |
Research Abstract |
本年は特にネオレッドセル(以下NRCと略す)の出血性不可逆性ショックに対するresuscitation fluid としての効果について検討した。実験には雑種成犬又はビ-グル犬を用い、気管内挿管し吸入麻酔下に調節呼吸とし酸素濃度を50%とした。NRCはHES(hydroxyethylstarch)と2:1に混合して用いた。可逆性ショック実験として40ml/minで脱血し収縮期血圧を60mmHgまで低下しさせ直ちにNRCを脱血量と等量返血した。これを3〜5回繰り返し、血液交換率を90%以上とした。その結果血管抵抗が著減し心拍出量が著増した。さらにNRCは赤血球の2〜4倍の酸素を運搬した。即ち可逆性ショックに対してNRCは心拍出量と酸素運搬量の両方を増加させて赤血球の不足を補った。次に不可逆性ショック実験としてショック後30分間治療せずに放置後にNRCを輸血しそれを繰り返した。可逆性ショック実験では脱血量と等量のNRC輸血で充分だったが本実験では脱血量の1.5倍量必要とし、ショックの回数も3回が限度だった。しかも今回は動脈圧、心拍数が低下し、全末梢血管抵抗は上昇し心拍出量は低下し心不全に陥った。しかしNRCは酸素運搬効率を32.2〜43.1%に増加させることで心拍出量の低下分を補い組織の酸欠を防止可能だった。これに対し赤血球は酸素運搬効率は15%以上に増やせなかった。以上より心機能が保持され、循環不全が回復可能な可逆性ショックに対して粘度が低く酸素運搬能に優れたNRCは心拍出量と酸素運搬量の両者を増加させて赤血球を輸血する以上の効果を示した。更に侵襲が高度で循環不全が進行してしまい従来の治療では救命不可能とされる不可逆性ショックに対しても、NRCは心拍出量は回復出来ないものの酸素運搬能を増加させることで組織に必要量の酸素を供給し救命の可能性が示唆された。
|
-
[Publications] 薄場 彰ほか: "人工血液の開発と展望" 日外傷会誌. 10. 4-12 (1996)
-
[Publications] 薄場 彰ほか: "NRCの課題-臨床治験を前にして" 人工臓器. 24. 201-205 (1995)
-
[Publications] 薄場 彰ほか: "出血性ショックにおける人工赤血球ネオレッドセルの効果" 日外科系連合誌. 20. 255-258 (1995)
-
[Publications] A Usuba et al: "Effect and safety of liposome-encapsulated hemoglobin neo red cells (NRC)as a perfusate for total cardiopulmonary bypass" Art Cells Blood Subs and Immob Biotech. 23. 337-346 (1995)
-
[Publications] 高折益彦,薄場 彰: "出血と生体反応-人工酸素運搬体の役割を考える" 人工血液. 3. 1-8 (1995)
-
[Publications] Usuba A: "Artificial Red Cell" Tsuchida E(eds)John Wiley and Sons,New York, (1995)
-
[Publications] Usuba A: "Liposome in Biomedical Applications" Weitenberg ES(eds) Harwood Academic Publishers,Amsterdam,