1994 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト絨毛ならびに胎盤における遺伝子調節機構に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
05454436
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤本 征一郎 北海道大学, 医学部, 教授 (60001898)
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Keywords | 遺伝子調節機構 / 絨毛 / 胎盤 / Bcl-2 |
Research Abstract |
前年度の研究において作製・蓄積した妊娠週数別のDNA-RNAライブラリーを用いて、今年度も引き続き細胞・組織の老化にかかわる遺伝子の探索を行った。特に、Bcl-2遺伝子が示す遺伝子発現量および発現部位の妊娠週数に伴う変化に注目しその生物学的意義に関する検討を行った。 これまでの研究成果によれば、Bcl-2は妊娠初期から絨毛細胞にその発現が認められ、その後妊娠期間を通じて安定に発現されている。しかし、妊娠末期、すなわち分娩の直前になると明らかな発現量の低下が観察される。 現在、Bcl-2の生物学的意義は、細胞のprogrammed cell death(アポトーシス)に関係しており、アポトーシスに特徴的な現象とされる細胞内におけるDNAの断片化を抑制することにあると考えられている。この観点からみると、Bcl-2の発現量の妊娠末期に認められる変化は、胎盤を構成している細胞の生物学的活性の変化に関連しており、胎盤自体の寿命を支配している何らかの機構の最終的な表現型として捉えられる。したがって、Bcl-2の発現にかかわる因子が胎盤自身により産生されているのか、あるいはBcl-2の発現が胎児側の因子によって支配されているのかが重要な問題となる。この点に関しては、胎児発育遅延・胎盤機能不全・妊娠中毒症などの症例を積極的に集め、研究を推し進めているところである。また、Bcl-2と他のがん遺伝子の発現状態との関連についても検討中である。これまでのところ、明らかに発現量の変化から関連が推測されるがん遺伝子は同定されていないが、さらに広範囲の検索を行う予定である。 Bcl-2の発現量に関係する因子の探索により、胎盤における遺伝子調節機構の一端が解明されるものと期待される。
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