1993 Fiscal Year Annual Research Report
口腔領域に生ずる皮膚科的疾患の病理病態解析と治療法に関する臨床病理学的研究
Project/Area Number |
05454521
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
上野 和久 岩手医科大学, 歯学部, 教授 (00048307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八重相 隆 岩手医科大学, 歯学部, 助手 (50220116)
熊谷 敦史 岩手医科大学, 医学部, 助手 (20195514)
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Keywords | 口腔粘膜 / 皮膚科的疾患 / 病態解析 |
Research Abstract |
歯肉に初発した皮膚科的疾患22症例について臨床的分析を試みた。その結果、初発時の年齢構成は17歳から60歳までであり、性差では女性が20例と多かった。臨床検査や経時的観察から皮膚科的疾患との関連を検索したところ、偏平苔癬によるものが7例、尋常性天疱瘡によるものが4例、瘢痕性類天疱瘡によるものが3例、白板症が1例、恐らくはホルモン失調よるものが4例あったが、長期に渉って病変が歯肉に限局しており、明らかな関連を見いだせない例も3例にみられた。また、男性に生じた2例はいずれも尋常性天疱瘡の歯肉初発であった。 歯肉病態は浮腫性紅班と剥離性びらんが主体で、時に水疱形成を伴っており、帯状や班点状に生じ、好発部位は上顎臼歯部と下顎前歯部であったほか、偏平苔癬によるものは唇頬側のみに、尋常性天疱瘡によるものは頬舌両側に生じる特徴があった。病理組織学的検索や免疫組織学的検索は鑑別診断の一助とはなったが、確定診断をするには至らなかった。また、尋常性天疱瘡によるものは歯肉初発後数カ月から数年以内に他の歯肉以外の部位にも病変現れやすいのに対して、偏平苔癬によるもの数年以上に渉って病変が歯肉のみに留まる例があった。 これら歯肉病変の成り立ちを明らかにすることはできなかったが、精神的ストレスを訴える例、子宮筋腫の既往例やその外科的切除例などがあり、病因との関連が推測された。治療としては、通常の歯周治療に加えて皮質ホルモン、その他薬物の局所適用、歯肉切除による病変部組織の除去、歯肉移植による病変部組織の置換、ステロイド剤の全身投薬、漢方などが試みられ、症例によってはそれなりに有効であったが、完治する例は少なかった。
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