1993 Fiscal Year Annual Research Report
3型プロスタノイドの超微量定量の確立と疾患時における生理的意義の解明
Project/Area Number |
05454580
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
菱沼 隆則 東北大学, 医学部・附属病院, 助教授 (20199003)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水柿 道直 東北大学, 医学部・附属病院, 教授 (60004595)
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Keywords | エイコサペンタエン酸 / モノクローナル抗体 / GC / MS / 阻害ELISA / 3型PG |
Research Abstract |
魚油中に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA、20:5 n-3)は、EPAはアラキドン酸カスケードにより代謝されて3型PGに変換され、動脈硬化や心筋梗塞等の血栓性疾患に関連する生理作用を示すことが知られている。しかしながら、3型PGは微量かつ不安定であるため定量法に関する知見は乏しく、生体内における量的実態は明らかではない。EPAの生理学的意義を解明するには、生体内のPG特に3型PGの生体内動態の定量的な解析が必要である。そこで、3型PGの超微量定量法の確立とその検出量の評価に応用するため、始めに3型PGの部分構造に対するモノクローナル抗体に関する検討を行った。 まず、2型PGと3型PGの構造の相違点のモデル化合物であるcis-3-hexen-1-olとヒト血清アルブミン(HSA)との結合体(3cis-HSA)を免疫原として作製したモノクローナル抗体4G9-12Bの反応特異性を検討した。3cis-HSAを抗原として、ブロッキング剤として1%ゼラチンを、一時抗体として4G9-12B抗体を用い、さらに、アルカリフォスファターゼ標識二次抗体を用いた二抗体法ELISAを実施するとき、一次抗体と同時に各種脂肪酸やPGを添加し、その阻害効果を検討した。その結果4G9-12B抗体は、3型のΔ^<17>-6-keto-PGF1αに対し50%阻害濃度(IC50)9.5ngと非常に高い反応性を示した。同抗体は、2型の6-keto-PGF1αに対しても弱いながら交差反応性(IC50 40ng)が認められたが、検討した他の脂肪酸とは有意な反応性を示さなかった。以上の結果から、本抗体は生体試料中のΔ^<17>-6-keto-PGF1αの分離、濃縮に有用であることが判明した。そこで、本抗体を2型、3型プロスタノイドの分別に使用するため、イムノアフィニティカラムを4G9-12Bの精製抗体とCN活性化セファロース4Bを用いて作製した。結合率は約10.5mg protein/ml gelであった。Δ^<17>-6-keto-PGF1α(1.0ng)の1%エタノール溶液をカラムに添加し、PBSで十分に洗浄した後、抗体カラム吸着成分を95%MeOHで回収し、誘導体化後、GC/SIMにて解析を行った。Δ^<17>-6keto-PGF1α、6-keto-PGF1ααのイソプロピル基脱離により生じる[M-43]^+イオン、それぞれm/z668、672をモニタリングイオンピークとしてGC/SIMを実施するとき、対応成分のピークが認められ、同ピークのマススペクトルによる解析よりΔ^<17>-6-keto-PGF1αの回収が確認された。検出されたΔ^<17>-6-keto-PGF1αはその18^O標識体を用いて作製された検量線より、その回収率は約100%であった。本法は、従来行われている検体からのPG画分の精製を必要としない簡便な方法であり、同抗体カラムの生体試料中の3型プロスタノイド解析への有用性が示された。
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