1995 Fiscal Year Annual Research Report
南西諸島におけるマングローブの消長と第四紀後氷期以降の気候変動
Project/Area Number |
05454604
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
黒田 登美雄 琉球大学, 教養部, 教授 (00205254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小澤 智生 名古屋大学, 理学部, 助教授 (80037233)
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Keywords | 熱帯気候 / 沖縄本島 / 八重山諸島 / 南西諸島 / マングローブ / 軟体動物群集 / センニンガイ / ウミニナ科 |
Research Abstract |
平成7年度においては,西表島における代表的なマングローブ林が分布する仲間川,船浦,浦内川の3ケ所を選定して,マングローブの軟体動物群集の調査を行い,センニンガイ[Telescopium telescopium(Linne)]の死殻を数多く採集した。センニンガイ属 (Telescopium)は,インド洋-西太平洋動物区の熱帯のマングローブの軟体動物群集を代表するウミニナ科(Potamididae)の巻貝である。本属の化石の産出は熱帯気候下で成立したマングローブの存在を指示するものとして古生物学者や生態学者から特別な注意が払われてきている。センニンガイは沖縄本島,八重山諸島の完新世の隆起海岸堆積物から,また,沖縄本島の貝塚時代前期の貝塚から産出する。ところが,現在のマングローブにおいては,八重山諸島で殻の色彩が残る保存良好の死殻が得られるものの生貝が発見されないため,南西諸島における本種の生息には疑問が投げかけられてきた。 今回,センニンガイが現生している可能性を探る目的で,保存状態の極めてよい死殻を選び^<14>C年代を測定し,330±80yr.B.P.(NUTA-3048)の年代値を得た。この結果は,マングローブの泥底表面のセンニンガイの死殻は現在生産されているものでは無いことを示している。生貝が採集されない事実をあわせ考察すると,八重山諸島においてもセンニンガイは既に消滅したものと判断される。南西諸島の後氷期におけるセンニンガイの分布の変遷は,後氷期の温暖期(Holocene Cimatic Optimum)に熱帯海洋気候の前線(tropical front)が北上し沖縄本島の北部付近まで進出した後,その後の気温低下に伴い次第に撤退しフィリッピン群島北部付近まで南下したことと調和的である。後氷期におけるセンニンガイの分布の変遷は,地質時代における熱帯性種の分布の変遷を考察する上での重要な基礎資料といえよう。
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[Publications] 黒田登美雄・米盛徳市 鶴岡知昭・玉城史朗: "ネットワーク型教育支援システムの活用について-全学履修を対象とした新たな情報処理教育の試み-" 球大学情報処理センター広報. 第5号. 17-24 (1995)
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[Publications] 下山正一・松本直久 黒田登美雄・竹村恵二: "筑紫平野における後期更新世の古環境" 九大理学部研究報告(地球惑星). 19. 53-79 (1995)
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[Publications] 小澤智生・井上恵介 黒田登美雄: "南西諸島のマングローブにおけるセンニンガイの消長と後氷期気候変動." 名古屋大学古川総合研究資料館報告. no.11. 23-33 (1995)
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[Publications] Ozawa,T.and Tomida,S.: "A new Turbo(Batillus)species from Chinese coasts." Venus(the Japanese Journal of Malacology). 54. 269-277 (1995)
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[Publications] Tomida,Y.,Kawai,K.,Setoguchi,T.and Ozawa,T.: "A new record of Youngofiber(Casteridae:Mammalia)from the Early Miocene of Kani City,central Japan." Bull.Natn.Sci.Mus.,Tokyo,Ser.C,. 21. 103-109 (1995)
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[Publications] 小澤智生・林誠司: "化石DNAからみたマンモスの系統的位置" 遺伝. 48. 56-57 (1994)
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[Publications] 安田喜憲・菅原聡 編集 黒田登美雄 共著: "講座:文明と環境,第9巻,森と文明" 朝倉書店,東京, 259 (1996)
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[Publications] 日本花粉学会 編集 黒田登美雄 共著: "花粉学事典" 朝倉書店,東京, 454 (1994)