1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05454680
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川口 三郎 京都大学, 医学部, 教授 (70024635)
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Keywords | 錐体路 / 錐体交叉 / 楔状束核 / 腰膨大 / 軸索再生 / 順行性標識 / 逆行性標識 / 中枢神経回路の再構築 |
Research Abstract |
哺乳動物の中枢神経伝導路は再生しないと広く信じられているが,それは本当ではない.本研究は哺乳動物の錐体路が切断後に再生することを示す確証を挙げ,再生しないと広く信じられている通説が正しくないことを明らかにしたものである.実験には8〜28日齢のWistar系ラットを用い,頭蓋底より開頭し,橋-延髄の腹側表面を走行する錐体路を直視下に完全切断したのち,2日後から9カ月後のいろいろな時期に切断された錐体路の再生の有無を順行性標識法と逆行性標識法を用いて検索した.逆行性標識法では切断側の大脳皮質知覚運動野に小麦胚芽凝集素結合ホ-スラディッシュペルオキシダーゼを注入して経路を終末にいたるまで追跡し,逆行性標識法では,錐体路の切断に先行して腰膨大より蛍光色素(Fast Blue,FB)を注入して錐体路細胞を標識したのち,錐体路を切断し,約3週間後,再度,腰膨大より別の蛍光色素(Diamidino Yellow,DY)を注入することにより二重標識を試みた.このような検索により,以下の結果を得た.切断部の条件が良ければ,すなわち,鋭利な切断が行われ,切断後に切断部とその近傍に浮腫を生じないような条件下では,いずれの日齢でも著明な再生が起こったが,切断部の条件が悪ければ切断部に瘢痕が形成され,再生は起こらないか,もしくは切断部を迂回して異所性の経路をとる貧弱な再生が起こるに過ぎなかった.切断部の条件が良い場合には再生線維は切断部を貫いて下行し,正常な投射と同様に,錐体交叉で完全交叉し,反対側の背側に向かい,楔状束核に終末を与えつつ,後索を形成し,仙髄に達し,走行途上の脊髄の各レベルで後角に終末を与えた.また,逆行性標識法によりFBとDYにより二重に標識される錐体路細胞の存在が確認された.これは正常な軸索を介してFBにより標識された細胞が,切断後に再生軸索を介してDYにより再び標識されたことを意味している.
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[Publications] Iwashita,Y.,Kawaguchi,S.,Murata,M.: "Restoration of function by replacement of spinal cord segments in the rat." Nature. 367. 167-170 (1994)
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[Publications] Kawaguchi,S.,Iwashita,Y.,Murata,M.: "Neural repairing of the point-to-point projections in the mammalian central nervous system." Biomedical Research. 15 Suppl.1. 127-134 (1994)
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[Publications] Inoue,T.,Kawaguchi,S.: "Regeneration of pyramidal tract following transection in the rat." Neuroscience Research. Suppl.19. S145- (1994)
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[Publications] Kurimoto,Y.,Kawaguchi,S.,Murata,M.: "Cerebellotectal projection in the rat:anterograde and retrograde WGA-HRP study of individual cerebellar nuclei." Neuroscience Research. (印刷中). (1995)