1995 Fiscal Year Annual Research Report
海洋生物による低沸点臭化物の発生機構とそのオゾン破壊に与える影響
Project/Area Number |
05455008
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Research Institution | Fukui University |
Principal Investigator |
伊藤 伸哉 福井大学, 工学部, 助教授 (90213066)
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Keywords | モノハロメタン / 臭化メチル / ヨウ化メチル / 海洋プランクトン / 海洋生物 / オゾン破壊 |
Research Abstract |
大気中の臭化メチルは、成層圏オゾンを破壊するガス状臭化物中で最も重要な化合物である。これまでのところ、海洋起源の臭化メチルの放出量は約10万ton/年と推定されているが、その推定値には大きな隔たりがあり、またその放出メカニズムは全く不明であった。本研究所では、多数の海藻・海洋プランクトンについて、モノハロメタン放出の有無に検索し、数種の海藻・海洋プランクトン直接的に臭化メチル、ヨウ化メチルが放出されることを確認した。さらに、これらの放出速度を定量し、例えばプランクトンの一種であるPavlova gyransからは約12〜13ng/g wet algae/hrのモノハロメタンが放出されることを明らかにした。その結果、海洋植物プランクトンの0.13%程度が臭化メチルを放出すれば、上記の約10万ton/年の放出量に相当することを算定した。さらに、モノハロメタンの生成機構を酵素レベルで研究し、こうした化合物が、藻類に含まれるS-アデノシルメチオニンハライドイオンメチル転移酵素反応により合成されることを証明し、これまで不明であった臭化メチル類の生成機構を分子レベルで明らかにした。
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[Publications] N.Itoh,M.Shinya: "Seasonal evolution of bromomethanes from coralline algae(Corallimaceae) and its effect on atmospheric ozone" Marine Chemistry. 45. 95-103 (1994)
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[Publications] 伊藤 伸哉: "ハロゲン化ペルオキシダーゼ酵素の解析とその応用に関する研究" 日本農芸化学会誌. 69. 1467-1472 (1995)
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[Publications] N.Itoh st al.: "Emission of monohalomethanes,methyl bromide and methyliodide,from marine micro-and macroalgae,and theri fomation mechanism" Marine Biology. (発表予定).
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[Publications] 伊藤伸哉、新家 勝: "バイオサイエンスとインダストリー51巻 海洋生物が生涯する低沸点臭化物の生成機構" バイオインダストリー協会, 4 (1993)
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[Publications] 伊藤 伸哉: "蛋白質 核酸 酵素41巻生物界におけるハロゲン化酵素の多様性とその働き" 共立出版(株), 11 (1996)