1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05554016
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
野依 良治 名古屋大学, 理学部, 教授 (50022554)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長村 俊彦 ユニソク科学機器開発研究所, 主任研究員
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Keywords | 炭素-炭素結合形成 / 化学的不斉増殖 / 有機金属化学 / 有機亜鉛錯体 / 触媒的不斉アルキル化 / DAIB |
Research Abstract |
「炭素-炭素結合形成」は最も基本的な有機化学反応の一つである。とくに、Grignard反応に代表される有機金属反応剤のカルボニル化合物への付加反応は普遍的合成操作といえる。光学活性アルコール類の一般的構築を可能にするその不斉反応化は有機合成化学の中心的課題であり、さらに、大量物質生産の観点からも理想的である化学的不斉増殖を目指す触媒化の開拓が強く望まれる。本研究者は、分子レベルでの合理的な錯体構造設計に基づく最高至適な反応系の構築がいかようにも可能である原理的利点をもつ有機金属化学を縦横に駆使し、高度な三次元空間認識能およびアルキル化反応促進作用をあわせもつ有機亜鉛錯体を合成、アルデヒド類の高エナンチオ選択的触媒的アルキル化をはじめて実現した。平成6年度は、平成5年度の計画をさらに推し進めるとともに、本不斉触媒反応において不斉源と生成物の鏡像体過剰率の間に観測される非線形現象の原因究明を含めた本触媒的不斉アルキル化反応の機構を追及した。その結果、触媒活性種となるキラルな有機亜鉛錯体間での自己、非自己認識がもたらす触媒前平衡系の熱力学が現象発現の根源であることを指摘することができた。活性種間の相互作用によって生じるホモキラル二量体とヘテロキラル二量体のX線結晶構造解析、これらの錯体の核磁気共鳴分光、蒸気圧浸透圧法を用いた分子量測定などの結果を基に、触媒平衡混合系の固相・液相での反応動的過程の理解を深め、非線形現象の定量化への基礎データを得ることができた。また、ストップト・フロー式の赤外および紫外分光装置のハード・ソフト面に改良を加えるとともに、核磁気共鳴分光にもストップト・フロー方式を展開した。触媒機構の解明のための技術的基盤も確立することができた。本研究は当初の計画通りに進行している。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] M.Kitamura: "Enantiomer Recognition of Asymmetric Catalysts.Thermodynamic Properties of Homochiral and Heterochiral Dimers of the Methylzinc Alkoxide Formed from Dimethylzinc and Enantiomeric 3-exo-(Dimethylamino)isoborneol" J.Phys.Chem.98. 12776-12781 (1994)
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[Publications] 北村雅人: "モレキュラー・キラリティー:発生、誘導、識別および体内の動態を追う、不斉触媒の自己・非自己認識" 化学増刊 123号. 35-42 (1993)
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[Publications] 野依良治: "有機合成化学の新しい展望-複合系の高次制御-、不斉触媒反応とエナンチオマーの相互認識" 現代化学増刊. 21. 233-250 (1992)
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[Publications] R.Noyori: "Practical Synthesis of Chiral Secondary Alcohols for the Preparation of Ferroelectric Liquid Crystals" New Functionality Materials. Volume C. 389-392 (1993)
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[Publications] R.Noyori: "Enantioselective Addition of Organometallic Reagents to Carbonyl Compounds:Chirality Transfer,Multiplication,and Amplification." Angew.Chem.,Int.Ed.Engl.30. 49-69 (1991)
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[Publications] R.Noyori: "Nonclassical Chemistry from the Oldest Organometallic Compounds:Multiplication and Amplification of Chirality" Organic Synthesis via Organometallics. 311-323 (1991)