1993 Fiscal Year Annual Research Report
原子状酸素とMoS_2の表面反応およびその再結合を利用した超低摩擦(ULF)の研究
Project/Area Number |
05555051
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大前 伸夫 大阪大学, 工学部, 助教授 (60029345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田川 雅人 大阪大学, 工学部, 助手 (10216806)
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Keywords | 原子状酸素 / 低地球軌道 / トライボロジー / 二硫化モリブデン |
Research Abstract |
低地球軌道(LEO)に存在する原子状酸素が固体潤滑剤のトロイボロジー特性に著しい悪影響を与えることが明らかになり、真空中で常用されるMoS_2膜のLEOでの有用性に対して危惧が高まっている。一方、MoS_2膜が一定の酸素分圧においてULF(超低摩擦)と呼ばれる極めて優れた潤滑特性を示すと言う報告がなされた。LEOでの酸素分圧はULFを示す圧力範囲に相当しているが、その組成は原子状酸素であることからMoS_2膜のトライボロジー特性は全く予想のつかないものとなっている。本研究は原子状酸素発生装置とトライボメーターを用い、LEOでのMoS_2のトライボロジー特性を明確にするとともに、かつ原子状酸素を再結合させて酸素分子とし、ULFを実現する可能性を追求することを目的としたものである。本年度は当初の計画に従い、実験装置の整備と予備実験を主として行ってきた。その結果、現有のレーザーブレークダウン型原子状酸素発生装置に新たに超高真空対応高精度トライボメーターを組み込み、トランスファーロッドを介してMoS_2試料をトライボメータからオージェ電子分光装置へ超高真空環境を維持したまま搬送できるように装置の改造を行った。さらにマスフィルタ型ガス分析管(四重極質量分析管)とCO_2レーザーを用いたレーザーデソープションスペクトロスコピー(LDS)によって酸素の吸着状態の解析をin-situに行えるように真空チャンバーの改造を行った。これら実験装置の改造によって、本申請課題に関する実験を行うにおいて全く支障のない実験装置を組み上げることができた。また、本装置を用いてこれまでに行った予備実験の結果からは、原子状酸素の照射によってスパッタリングMoS_2薄膜の摩擦係数は本申請者らの以前の報告と同様、著しく増加することが確認された。さらに、単結晶MoS_2の基底面は酸化に対してかなりの耐性を有することが明らかとなった。また、LDSによる分析の結果、原子状酸素はSと反応してSOあるいはSO_2を形成していることが明らかにされた。
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[Publications] M.Tagawa et al.: "Atomic oxygen generators for surface studies in low earth orbit" AIAA Journal. Vol.32. 95-100 (1994)
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[Publications] N.Ohmae: "Influence of atomic oxygen on space tribology in a low earth orbit" Wear. Vol.198. 99-103 (1993)
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[Publications] 田川雅人: "低地球軌道環境のシミュレーションを目指して" 生産技術誌. Vol.45. 56-59 (1993)
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[Publications] N.Ohmae: "Reaction of atomic oxygen with solid surfaces as related to spacetribology in low earth orbit" Proc.1st Int.Workshop on Microtribology. 266-275 (1992)
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[Publications] M.Tagawa et al.: "Contact angle,wettability and adhesion" VSP(Utrecht,The Netherlands), 971(14) (1993)
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[Publications] N.Ohmae: "Surface Diagnostics in Tribology" World Scientific(Singapore), 342(28) (1993)