Research Abstract |
途上国における交通基盤整備を,マクロ的指標のみによって評価することは不十分であり,地域単位での効果分析が重視される必要があるが,一般に途上国では,詳細な地域分析を可能とする地域経済統計の入手は困難とされる。本研究では,応用一般均衡モデルの考え方を援用し,全国産業連関表と限られた地域データのみに基づく,操作性の高い多地域モデルの枠組みを提案する。具体的な適用対象としては中国を採り,これを29の地域単位で分析するが、6年度は実証と理論の両面に渡って,以下の点で研究を進めた。 (1)モデルの基準年を1985年から,最新の連関表が得られる87年に変更し,従来のモデルを再計算した。結果として得られた北京市に関する地域表を,現在唯一の公表済み地域表である87年北京表と比較し,精度を確認した。さらに,名古屋大学と国務院のグループが作成中である,中国7地域間連関表の暫定データを入手し,地域間交易に関する予備的検証を行った。(2)我々の従来のモデルは,応用一般均衡モデルと同じ意図に基づいて作成されており,均衡条件も考慮されているが,かなりの部分で経験式を含んでるため,経済理論との整合を目指して,全面的な改訂を試みた。具体的には,経済活動の主体として一般企業・運輸企業・家計・政府・外国を考慮し,それぞれの行動を記述することで,モデル全体を均衡条件の組として体系的に記述することに成功した。これにより,従来のモデルが本質的に配分モデルであって,交通基盤整備による経済規模の拡大を表現出来ない,要素市場が内生化されていない,という問題点が同時に解決される。 以上の研究成果については,第8回ARSC研究発表大会(神戸市)において発表した。改訂後のモデルを用いた実証分析に関しては,年度内に実施出来なかったが,次年度早期の完了を予定している。
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