1993 Fiscal Year Annual Research Report
脳の老化への関与が推定されるグルコース膜輸送担体活性の特異的制御物質の開発
Project/Area Number |
05557107
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
石橋 貞彦 広島大学, 医学部, 教授 (90012616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒川 知則 広島大学, 医学部, 講師 (00124793)
木村 栄一 広島大学, 医学部, 教授 (30034010)
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Keywords | 老化促進モデルマウス / グルコース代謝 / グルコース輸送担体 / サイトカラシンB |
Research Abstract |
老化促進モデルマウス(SAM)のProne系(P8系)は4〜6ヶ月齢から促進老化を示すが、それに先立って早い個体では8週齢から学習や記憶障害を自然発症する。従って、SAMP8マウス大脳における機能障害の原因の解明は痴呆の問題解決に大きく寄与するものと考えられる。本研究は老化促進の早期発見手段の開発を目的として、若齢期(4〜8週齢)SAMP8マウス大脳におけるグルコース代謝活性を同週齢の老化Resistant系(R2系)と比較した。 1)両系統マウス大脳におけるグルコース代謝活性の比較:若齢期の両系統マウス大脳から調製した無傷細胞を用いて、[6-^<14>C]-D-グルコースからの^<14>CO_2産生を測定した。その結果、SAMP8マウス大脳における^<14>CO_2産生はSAMR2マウスに比べて約1.2倍(p<0.03)の上昇を認めた。しかし、両系統マウス大脳から調製したホモジェネートを用いた場合では^<14>CO_2産生に相違は認められなかった。この結果は細胞膜を介するグルコース利用活性が異なっていることを示唆している。 2)両系統マウス大脳におけるグルコース輸送活性及び輸送担体数の比較:[^3H]-2-デオキシ-D-グルコースの輸送活性を若齢期の両系統マウスから調製した無傷大脳細胞を用いて比較した。その結果、SAMP8マウスにおいて、SAMR2マウスと比較して約1.4倍(p<0.01)の上昇が観察された。一方、粗膜画分における[^3H]サイトカラシンB結合実験によりグルコース輸送担体数を見積ったところ輸送活性と同様、SAMP8マウスのBmax値に約1.4倍(p<0.001)の上昇が観察された。このような両系統マウス間における相違は若齢期の大脳皮質においてのみ観察された。 以上の結果より、SAMP8マウスにおいて、促進老化を示す段階よりも早期に認められる脳機能障害に大脳皮質におけるグルコース輸送担体のタンパク量の増加を伴うグルコース代謝活性の一過性の上昇が関与している可能性が示唆された。
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