1994 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質吸着層で血液と材料との界面を安定化させる細小人工血管の開発
Project/Area Number |
05558117
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
岡野 光夫 東京女子医科大学, 教授 (00130237)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千秋 和久 テルモ(株), 開発研究部, 研究員
鈴木 憲 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (90216375)
野尻 知里 テルモ(株), 医科学研究所, 主任研究員
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Keywords | ミクロドメイン構造 / ブロックコポリマー / 細小人工血管 / 抗血栓性材料 / 血小板活性化阻害 / 細胞内カルシウム / タンパク質吸着層 |
Research Abstract |
親水性と疎水性のミクロドメインをダクロングラフト(内径3mm、長さ7cm)の内側に安定にコートすることに成功した。このコート層は生食塩水中、および血液中で長期に安定であることを確認した。血小板とこのミクロドメイン構造表面が接触した場合、血小板の活性化が著しく抑制されることはすでに報告してきている。本研究では血小板の活性化を引き起こす初期反応である細胞内カルシウムイオンの変化を色素を用いたケイ光測定によって追跡し、ミクロドメイン構造表面上での特性を検討した。通常、血小板は異物表面上に粘着後、形態変形を起こしセロトニンなどの放出反応を生起させる。このため粘着後の血小板は放出反応によって凝集能を著しく低下させることを電子顕微鏡で確認した。同時にトロンビンで粘着血小板を刺激(粘着後30分および60分)するとカルシウムイオンの上昇は認められなかった。一方ミクロドメイン表面に粘着した血小板はカルシウムイオンを上昇させ粘着血小板が凝集能を維持させていることが明らかとなった。形態も球形を保ち、偽足の発達は認められず長時間Nativeな状態で粘着し、材料表面が血小板の活性化を抑制していることが明らかにされた。in vivoの実験も同時に進行させており、1年以上にわたって3mmの人工血管が材料の単分子層のタンパク質の吸着層によって血管と材料の界面が安定化させていることが明らかにされた。特に血管と人工血管の接合部は、内皮細胞と単分子タンパク質層が接しているようになっている点が確認された。このような界面が安定する理由についてより詳細な検討を進めて行く必要がある。また、吸着したタンパク質が単分子層で安定しているのは、タンパク質がほとんどコンホメーション変化を生起こさせないためであると考えられるが、なぜミクロドメイン表面上で吸着タンパク質のコンホメーション変化が抑制されているのかについてはさらに検討を進めて行く必要があると考えられる。 以上、ミクロドメイン表面の血小板の活性化の抑制により細小人工血管として利用可能であることが次第に明らかにされつつある。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 阿部一彦: "HEMA-Stブロック共重合体表面における能動的血小板活性化の抑制" 人工臓器. 22. 380-385 (1993)
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[Publications] C.Nojiri: "Improved patency of HEMA/Styrene block copolymer-coated small vessel prosthesis without neointima formation" 4. 53-60 (1993)
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[Publications] C.Nojiri: "A newly amphiphilic block co-polymer with improved elastomeric properties for application in various medical devices" ASAlo journal. 39. 322-326 (1993)
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[Publications] T.Okano: "Prevention of changes in platelet cytoplasmic free calcium levels by interaction with 2-hydroxyethy methacrylate/styrene block copolymer surfaces" J.Biowed.Mater,Res.27. 1519-1525 (1993)