1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05610002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村田 純一 東京大学, 教養学部, 助教授 (40134407)
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Keywords | 現象学 / 心の哲学 / 意識 / フッサール / メルロ=ポンティ / ブレンターノ / 独墺学派 |
Research Abstract |
本年度は、これまでのブレンターノからフッサールに至る初期現象学に関する研究を継続するとともに、そこで得られた成果を現代の「心の哲学」の議論と結び付けることによって、「現象学的観点からの『心の哲学』」を形成する道を探ることを集中的に行った。 とくに現代の脳科学、認知科学、そして「心の哲学」で中心課題と見なされている意識を巡る問題、中でも感覚質と呼ばれる意識のあり方を巡る問題を取り上げて現象学的観点の有効性を明らかにすることを試みた。現代の意識を巡る議論では、一方の極に意識を脳過程へ還元できると考える見方、他方の極に意識の還元不可能な特有性を強調する見方があり、その間で作られるスペクトルの中に多くの見方が存在している。しかし、とくに感覚質の議論で顕著に見られるように、多くの議論は大枠では17世紀に作られた自然科学の世界像、すなわち意識と物質の二元論的見方に捕らわれたままのように見える。それに対して、フッサールからメルロ=ポンティに至る現象学の中等から提出されたのは、そうした二元論を越える「生活世界」や「身体」という概念であった。本研究では、メルロ=ポンティの「盲人の杖」のモデルを基本にし、それをさらに現代の脳科学、あるいはギブソンのような最近の知覚論の成果を踏まえて展開し、意識に関する現象学的観点からの「二重側面説」を提起した。この説の特徴は、現代の同一説や機能主義とは違って、意識と身体を同じ対象的レヴェルで捉えるのではなく、対象的レヴェルと「生きられた」レヴェルという二つの不可分な側面をもつものとして捉える点にある。この成果は論文や学会発表や公にした。
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[Publications] 村田純一: "技術の哲学" 岩波講座『現代思想』. 13. 3-44 (1994)
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[Publications] 村田純一: "意識-その科学と現象学" 岩波講座『現代思想』. 10. 109-138 (1994)
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[Publications] Murata,Junichi: "Consciousness and the Mind-Body-Proglem" Proceedings of the iuternatiouol Symposium IIAS. 1-15 (1994)
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[Publications] 村田純一(他共著): "現象学事典" 弘文堂(木田元,野家啓一,鷲田清一,村田純一編), 748 (1994)