1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05610025
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Research Institution | Koyasan University |
Principal Investigator |
武内 孝善 高野山大学, 文学部, 助教授 (60131611)
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Keywords | 寛平法皇 / 寛平法皇御作次第 / 密教作法次第 / 四度次第 |
Research Abstract |
1.平成5年度に校訂作業を終えた『金剛頂経蓮華部心念誦次第』1巻、『延喜十八年大覚寺御潅頂式』巻をもって、寛平法皇の御作次第と考える9種の作法次第すべてを翻刻することができた。 2.このなか、『延喜十八年大覚寺御潅頂式』はこれまで寛平法皇の御作次第であることが忘れられていたが、潅頂の日時・場所などから、延喜18年(918)8月17日、嵯峨大覚寺において、法皇が大阿闍梨となり、寛空をはじめ貞寿・貞運・貞従・仁元・仁全・神昇の7名に伝法潅頂を授けたときの御作次第とみなして大過ないと考える。 3.これによって、従来1部だけと考えられたきた寛平法皇の潅頂の際の儀式書は、(1)延喜8年5月のものと、(2)延喜18年8月のものとの2種類伝存することが明らかとなった。 4.寛平法皇の御作次第のうち、『金剛頂経蓮華部心念誦次第』は、保寿院流・華蔵院流・伝法院流で四度次第の1つとして使用されているが、その使用を知りうる古写本がみつかった。それは保延6年(1140)3月、伝法院流の祖覚〓のもとで書写された高野山大明王院蔵本で、奥書に「保延六年庚申三月廿五日於高野山密厳院下院奉受始」とあり、使用の起源が覚〓時代まで遡りうることがわかった。 5.寛平法皇の御作次第9種-(1)十八道念誦次第1巻(2)金剛頂経蓮華部心念誦次第2巻、(3)同1巻次第、(4)胎蔵秘密略大軌2巻、(5)胎蔵略述1巻、(6)三親王潅頂時儀式書作法1巻、(7)同夜作法1巻、(8)三昧耶戒文1巻、(9)延喜十八年大覚寺御潅頂式1巻-を中心にした『寛平法皇御撰述集』第1巻を編集中である。おそくとも、1994年中には刊行したいと考えている。
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