1993 Fiscal Year Annual Research Report
九官鳥の実験的嗄声に学ぶ喉頭癌嗄声の回復と早期発見の指標に関する音声分析的研究
Project/Area Number |
05610066
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮本 健作 大阪大学, 人間科学部, 教授 (90049148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 真 宇都宮大学, 教養学部, 助手 (50231478)
山田 恒夫 大阪大学, 人間科学部, 助手 (70182540)
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Keywords | 嗄声 / 喉頭がん / 母音波形 / 回復指標 / 予防指標 / 嗄声悪性度分類 / 九官鳥 / ヒト |
Research Abstract |
九官鳥に実験的嗄声を形成し、次のような成績を得た。(1)注射直後、模倣母音/a/の周期性高振幅波が消失し典型的な正弦波を呈した。(2)注射16分後、サイン波形の中に対照例に見る周波数の再現を予測させる波形が認められた。(3)時間経過に伴い周期波の振幅が増大し、30分後、周期性高振幅波の振幅が注射前のレベルまで完全に回復した。(4)喉頭は模倣母音の生成に重要な役割を演じることを示唆する。 喉頭癌と診断された成人を対象に、嗄声を音声分析を試み、次のような知見を得た。(1)放射線治療を開始する前の母音/a/の波形はサイン波形を示した。(2)月日の経過とともに、再現した周期性高振幅波の振幅が増大し、2年後ほぼ健常波形に回復し、嗄声も完全に消失した。(3)嗄声の経時的変化を視覚表示し、嗄声の「悪性度分類」(試案)を作成した。(4)母音/a/の原波形の経時的変化は臨床所見をよく反映した。(5)嗄声の「悪性度分類」を用いることにより、嗄声の回復過程を簡便かつ客観的に視覚化することができた。(6)母音/a/の周期性高振幅波は喉頭癌患者嗄声の「回復指標」となり得る可能性が示唆された。(7)将来、悪性嗄声の「予防指標」としても役立つと考える。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 宮本健作: "「鳴管型人工喉頭」の開発と臨床応用" 日本気管食道科学会会報. 39. 438-443 (1988)
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[Publications] 宮本健作: "声のリハビリから喉頭癌嗄声の早期発見へ" 日本音響会誌. 48. 906-912 (1992)
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[Publications] 宮本健作: "九官鳥における実験的嗄声の発症から回復までの模倣母音の波形変化" Neurosciences.19. 181-184 (1993)
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[Publications] Miyamoto,K.,Matsunaga,T.,& Sato,T.: "Recovery of pleasure in talking in a syrinx-type artifical larynx speaker" broncho-esophagology. 517-518 (1990)
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[Publications] 宮本健作,芸崎朱美: "母音波形からみた風邪嗄声と喉頭癌嗄声の視覚的特徴" 日本心理学会第57回大会発表論文集. 237 (1993)
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[Publications] 宮本健作,山田恒夫: "鳴管型「人工喉頭」の臨床応用から実用化へ" 大阪大学人間科学部紀要. 15. 151-188 (1989)