Research Abstract |
平成5年度においては,調査校の設定と依頼を行ない,調査のための質問票を作成した。また,調査のための質問票として,学校環境適応度感尺度(SAS),対人関係に関する心理的距離地図(PDM)記入用紙,将来イメージ測定尺度,将来計画表の作成および印刷を行った。 また,高校中退の原因の一端を明らかにするため,深く関係している事柄として,高校における進路指導の実態と,進路指導に対する教師,生徒,保護者,進路先関係者の態度について調査した。この結果,高校では,進路指導の重要な領域である生き方の指導はあまり行われておらず,むしろ受験指導に力が入れられている実態が明らかになった。一方,進路指導に対する態度に関しては,教師は「生き方在り方」の領域を重視しており,実際の指導と,重要と考えていることの間にギャップがあることが確認された。また,教師は,「生き方在り方」「相談と追指導」の領域を他の人々より重視しており,生徒がこれらの領域については最も重要視していないなど,関係者間の態度のずれもみられた。これによって,大学進学や就職を目前に控えた高校生や保護者の要望と,生に方教育を重視したいとする教師の理想の間にはその態度に差があることがわかった。ただし,現実の進路指導においては,教師の意図が必ずしも反映しているとは言いがたく,中学における進路指導も含めて,このことが,高校における不適応者,ひいては中退者を発生させる原因のひとつとなっていることが示唆された。
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