Research Abstract |
たとえば,「ボール6個とボール3個がありました.かけるといくつになるでしよう.」とか「小学生一人の体重が6〓でした.5人で何〓になるでしょう.」といった意味がなかったり非現実的な問題をネパールの農民,商人,小学生,中学生,日本の小学生に与えた.その結果を要約すると以下のようになる. まず,ネパールの農民,商人の70-80%以上が,ほぼ全ての項目で,問題が,意味がない,あるいは,非現実的であることを自発的に指摘する.一方,ネパールの小学生(5年生),中学生(7,9年生)の90%以上は,ほとんどの項目で,算数問題の問題点を指摘することなく解いてしまう.これは,日本の小学生(5,6年生)の反応と類似している. つまり,ネパールの農民や商人は,算数問題の現実性に敏感だが,それと対照的に,ネパールの小,中学校の生徒は,日本の小学生と同じように算数問題を機械的に解いてしまう.その傾向は日本の小学生より高い.このことから,第一に,学校で算数の問題を解くときには,その意味や現実性をモニターしないという傾向は,文化的な普遍性を持つことが明らかになった.第二に,ネパールの小,中学生が算数問題の意味や現実性をモニターしない度合が日本より高かった理由は,ネパール小学校での算数授業のほとんどの時間が機械的に問題を解くということにさかれていることによると考えられる. なお,すでに研究計画で述べた通り,ネパールの農民,商人,小,中学生のデータは,トヨタ財団研究助成によって本研究研究代表者らによって行われた調査によるものを用いた.
|