1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05610136
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Research Institution | OSAKA CITY UNIVERSITY |
Principal Investigator |
八木 正 大阪市立大学, 文学部, 教授 (80022101)
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Keywords | 食肉産業 / と場 / と畜解体 / 部落差別 / 職業差別 / と場差別 / 部落産業 / 被差別部落 |
Research Abstract |
(1)近代日本における食肉産業従事者は、その大部分が被差別部落民衆によって担われてきている。それは歴史的にかれらが、斃牛馬の処理解体に専一的に従事し、その解体技術を錬成してきたことに由来している。しかしそれは同時に、かれらが厳しい部落差別に晒され、職業選択の幅が極めて狭かったことの証左でもある。(2)食肉産業と被差別地区との密着性は、関西と関東とではかなり異なっている。前者ではその密着度は高く、「と場」も地区の中か近辺に所在しており、したがって食肉産業の振興も地域ぐるみで取り組まれている。後者では職場と居住地との分離傾向が見られ、食肉産業労働問題は職場を通して対処されている。(3)「と場」労働者の雇用身分は、その歴史的経緯から地域によってかなりの多様性を示している。公務員身分であるのは、東京都、大阪市、広島市である。全国の食肉卸売市場ないしセンターの「と畜」業務従事者は、その大半が第3セクターの公社員の地位にある(代表的なのは、横浜市)。第三の雇用形態は民間雇用であるが、その中には荷受・卸売業者組合によるもの(代表的なのは、大阪府羽曳野市)、大手民間資本によるもの(たとえば、徳島県)、さらには農業経済連によるもの(全国各地)がある。(4)食肉卸売市場ないしセンターの各目的な設営者の如何を問わず、その実質的な経営・利用主体の大半は、どこでも荷受・卸売業者であると見てよい。また、経営主体が何であろうと、「と畜」解体作業に実際に従事しているのは、大部分が被差別地区関係者にほかならない。(5)現在では、「と場」はすべて近代化され、基本的にオンライン方式を採用している。しかし「と畜」解体作業は、かなりの程度職人技術的な要素を有しており、今の職場でもその手作業の技術は高い評価を得ていて、伝承も試みられている。それゆえまた、この作業は定時的な管理体制になじまない側面がある。
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