外国人居留地を事例とする、都市の「地域イメージ」の形成と変化についての比較研究

1993 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 05610163
• Research Institution: Soka University
• Principal Investigator: 森 幸雄 創価大学, 文学部, 助教授 (00191007)
• Keywords: 外国人居留地 / 都市 / 地域イメージ

Research Abstract

1 外国人居留地をもっていた日本国内の都市において、旧外国人居留地域の現状はかなりの違いがみられることが確認された。横浜や神戸などのように、成立時点の居留地の地域イメージを残しているところもあれば、大阪や東京のようにそうした地域イメージが希薄になってしまった都市もある。また、新潟では開港場であった痕跡はひじょうに稀薄になっている。長崎では貿易をほぼ独占していた江戸時代のイメージがむしろ強い。
2 各都市とも、地震・火災あるいは空襲などによる建物・都市施設の消失を経験しており、各地域の変化の時代区分はかなり明瞭につけられることがわかった。
3 函館・長崎・神戸では、外国人居留地に残存する建物の保存修復が熱心に行なわれ、都市の一つのシンボルとして外国人居留地地域のイメージが用いられている。さらに残存する建物が少ない横浜もふくめて、これらの都市では新規施設の建設や環境整備の際に外国人居留地のイメージが使われている。
4 外国人居留地のイメージの稀薄な都市では、都市の成立や発展の中で、都市と外国人居留地との結び付きが乏しかったようである。新潟では港湾都市としての機能のなかで外国人居留地が果たした役割は乏しく、都市のイメージとの結び付きは十分とはいえなかった。東京・大阪では、外国人居留地区は成立当初こそ明瞭な地域イメージを持つ地域であったが、政治や経済の他の都市機能の集積のなかでそうした地域イメージは目立たないものとなっていった。また、横浜・神戸という外国との関連が深い都市イメージをもつ都市が近くにあったことも大きく影響していよう。