1994 Fiscal Year Annual Research Report
外国人居留地を事例とする、都市の「地域イメージ」の形成と変化についての比較研究
Project/Area Number |
05610163
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
森 幸雄 創価大学, 文学部, 助教授 (00191007)
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Keywords | 外国人居留地 / 中華街 / 都市 / 地域イメージ |
Research Abstract |
1 幕末に開港・開市場が設定された都市の変化は一様ではない。こうした歴史的経緯により,都市によって地域イメージは異なる。 2 新潟・大阪・東京では居留地のイメージは乏しい。(1)新潟では結局居留地は設定されず,日本海側の港湾として発展した。(2)大阪は,開港場に大きな期待が寄せられたが,欧米人商人による外国人居留地としては発展しなかった。その後,戦前は中国人による対中国綿貿易の商業拠点となったが,第二次大戦の空襲とその後の経済状態の変化により,その面影はない。(3)東京では,政治の中心として多くの外国人が訪れているが,その活動の場は居留地地域に限られないため,居留地のあった築地に強い外国のイメージはない。 3 神戸・横浜は都市イメージとして居留地が意識される。平成7年の阪神大震災で大きな被害を受けた神戸は比較的良く旧居留地の面影を残していた。従来こうした都市イメージは観光資源としてのみみられていたが,今日では都市造りの基本的イメージとなっており,復興計画にも反映するものと思われる。 4 函館には居留地は設定されたが,外国人は市内に雑居し,特定の地域に居留地イメージが付与されてはいない。都市イメージにはその後の海産物貿易の発展や,北海道の入り口としての位置づけの影響が大きい。 5 長崎の開港場としてのイメージは江戸時代からのものが含まれている。江戸時代には対外貿易の多くを占め,外国人が居留する都市としての伝統がつくられていた。開港後,貿易にしめる位置は低下し,都市経済にしめる貿易の位置はかならずしも高くなかったが,居留地に残る住宅や港町としての伝統のイメージは強い。 6 開港場のイメージには,居留地設定時には想定していなかった中国人の居住する中華街の存在が大きい。
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