1993 Fiscal Year Annual Research Report
過疎地域流出者の意識とふるさと回帰-岡山県笠岡諸島の住民の場合-
Project/Area Number |
05610168
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Research Institution | Sakuyo Music College |
Principal Investigator |
中桐 規碩 作陽音楽大学, 音楽学部, 教授 (90211416)
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Keywords | 過疎 / 社会移動 / 地域社会 / 人口の流動性 |
Research Abstract |
笠岡諸島7島の内、六島、真鍋島、北木島楠地区、白石島、高島の調査を実施した。各島で事情は多少異なるが、過去10年間に20%以上の人口減少がみられ、過疎化の激しい地域である。笠岡諸島は福山、水島、坂出の各臨海工業都市に囲まれ、住民の流出はこれらの都市に向っておこなわれたと思われたが、現実には戦前から流出のあった京阪神地区が中心になっており、人口の還流ルートができあがっている。 笠岡諸島住民は流出する一方で流出先からの回帰が多く認められる。現住民の70%以上は回帰者である。回帰者の平均流出期間は、六島の32.7年、真鍋島19.5年、北木島楠地区17.7年、白石島16.5年と本土から遠ざかるに従って長くなっている。回帰に伴う無職化率は白石島51.6%、六島72.5%等高い値を示す。一般に職場がないから過疎になっていくと言われるが、回帰に伴う職業移動を通して、過疎と就業機会の関係を考える資料を得ることができた。また回帰者は高齢と医療の問題をかかえて二度目の流出・二度目の回帰をする。 流出者はふるさとを捨ててしまう(コミュニティーとの断絶)のではなく、常にふるさととの交流を保とうとする。その交流状態はよく、そのためにふるさとに残している家屋敷の管理は十分である。次年度は追加調査をおこなうと共に資料の詳細な分析、検討を加える。
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