1993 Fiscal Year Annual Research Report
現代アメリカ中等教育改革の批判的検討-中等教育システムの構造変容を中心に-
Project/Area Number |
05610199
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
江原 武一 京都大学, 教育学部, 教授 (00012568)
|
Keywords | 中等教育改革 / 中等教育システム / パネル調査 / アメリカの教育 |
Research Abstract |
今年度は、1アメリカ中等教育システムの特質に関する歴史的・比較的研究、2アメリカ中等教育システムの社会的・教育的効果に関する統計的解析の、2つのサブテーマを並行して研究を進めた。 第1のサブテーマについては、アメリカ中等教育システムの特質(長所と短所)を、中等教育の歴史的動向や教育体系内の位置、中等教育政策などの諸側面に注目し、OECD諸国、とくに日本との比較分析を通して明らかにするために、アメリカの中等教育および中等教育改革関係、中等教育と高等教育の関連、アメリカおよびOECD諸国の高等教育関係などの諸資料を収集し、基礎的な分析を行った。今後はさらに関連資料の補充と分析を通して、アメリカ中等教育システムの特質を明らかにする。 第2のサブテーマについては、「高校生将来調査」の再解析により、中等教育と高等教育の接続の問題を中心に、現行の中等教育システムの問題点を明らかにした。高卒後6年目の学位取得率を例にすれば、次のような新たな知見が得られた。(1)学位取得率には人種や出身家族の社会経済的地位、学力、高校の課程等によって現在でもかなり大きな較差がみられる、(2)そうした進学に不利な属性をもつ者は、上級の学位になるほどますます不利になる、(3)黒人やヒスパニックであることは、単独の要因としては大学進学に有利だが、実際には大部分の黒人やヒスパニックは高校の学業成績が平均以下であり、高校中退率も高いので、全体としてみれば不利な立場にある、(4)また彼らはたとえ奨学金を得て大学に進学しても、中退者が多いため学位取得率は低い。 なお「NLS調査」については、データ整備を行った。今後はこの調査データについて再解析を行うとともに、当初の予定に従って、「高校生将来調査」と「NLS調査」の比較分析を計画している。
|