1994 Fiscal Year Annual Research Report
中国山地における民俗の形成と伝播-社会伝承を中心として-
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05610250
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
喜多村 正 島根大学, 法文学部, 教授 (60101185)
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Keywords | 村落構造 / 親方・子方 / 入会林野 / 村落自治 / 牛馬放牧 / 牛馬神信仰 / 荒神信仰 / タタラ |
Research Abstract |
本研究は、鳥取県、島根県、岡山県、広島県にまたがる中国山地のこの地域を、一つの民俗圏として設定し、地域の民俗的特質を抽き出すことを目的とするものであるが、当該年度は、備後と出雲の比較を念頭に置き、島根県と広島県の諸村落を対象として、以下の各地区においてフィールドワークを実施した。 (島根県仁多町)久比須、亀蒿、前布施、山方、林原 (島根県横田町)木馬木、小馬木 (島根県木次町)尾原、下布施、北原、芦原 (広島県東城町)上千鳥、下千鳥、小串 (広島県西城町)保賀谷、坂根、本谷、寺谷 (広島県比和町)福田、小和田 (広島県高野町)上湯川、下湯川 今年度、特に集中的に資料を集めたのは入会林慣行に関するものであった。中国山地の広島県側では、入会林を放牧地として共同利用するケースが顕著である。比和町福田では、毛無山の山峰側200町の町有林、山麓側120町の部落共有林を合わせて福田牧野組合が牛の放牧場として利用していた。部落有林の管理主体が同時に牧野組合を兼ねていたが、町有林の部分については、福田奨善会という法人を別個に組織し、管轄してきた。一方の島根県側では、木馬木のような県境北帯では放牧地として利用する例もあるが、現在残っている入会林の大部分は採草地であった。前布施の下山は、全体で61筆に細分されて、現在は私有地となっているが、もともとは各家の耕作反別に比例して利用権を分割していたものを、戦後になって個人登記したものである。 中国山地は和牛の産地としてつとに知られており、したがって牛に関する伝承も豊富である。特に牛馬神を祀る習俗は一帯に広がっている。牛馬神信仰の中心となるのは大仙信仰と縄久利信仰であり、この二神は備後、出雲を問わず分布している。但し、備後では山の神が牛馬の守護神として信仰されるのに対し、出雲では荒神が牛馬の守護神として祀られている等の地域差も認められる。
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