1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05610270
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
大石 雅章 鳴門教育大学, 学校教育学部, 助教授 (50152046)
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Keywords | 寺社勢力 / 山伏化 / 修験道 / 地方寺社 / 幕府祈祷寺院 / 檀家寺院 |
Research Abstract |
中世後期、中央権門寺院(延暦寺・興福寺など)を中核とする寺社勢力の衰退過程で、寺社勢力を支えたところの末寺・末社である地方寺社がいかに変革するのか、さらに近世前期にかけて地域民衆の宗教活動がいかなる形態をとり、これらの地方寺社といかに関わるのかを分析した。 研究地域としては河内国・和泉国・紀伊国を中心に今年度からは阿波国もその対象地域とした。研究方法として中世後期の下僧による山伏化現象を理解するために、修験道の歴史上の位置づけに注意をはらい、修験道が在家の宗教活動と密接に係わる点に注目しながら検討をおこなった。とくに今年度は河内国の観心寺周辺の現地調査を実施し、当該地域の宗教活動状況を考察するために、現在における住民の宗教と寺院との関係を調査した。その結果、中世後期に下僧の山伏化(修験化)が学衆によって弾圧された観心寺において、現在の境内にも修験道関係の行者堂が存在し、その行事は観心寺僧が全く関与せず周辺村落の在俗の講によって運営されていたことが判明した。また、観心寺七郷の葬礼については、朱印地を得た観心寺はほとんどかかわらず、七郷にある大念仏宗西恩寺が大半の檀家寺となっていることも明らかにしえた。このような調査事実から、中世寺院が近世社会にいたると、幕府祈祷寺院と村抱の檀家寺院(葬礼・仏事寺院)に大きく分離し、修験の行者堂の行事が、在俗の人々によって構成される講によって運営されているしように、民衆生活に密着した宗教行事の中で、百姓ら自身が主体的に実施するものの比重が高くなっているといえるであろう。その点で中世寺院領主のもとで実施されていた地域寺院の宗教行事とは大きく異なるものとなっている。
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Research Products
(1 results)