1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05610273
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉村 豊雄 熊本大学, 文学部, 助教授 (90182823)
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Keywords | 地方知行制 / 知行 / 給人 / 給人財政 / 主従制 / 石〓 / 物成 / 大名 |
Research Abstract |
九州諸藩の大名家、なかんずく細川家(豊前小倉、肥後熊本)の史料調査をふまえて、「幕藩制初期における『物成』の機能」(熊本大学『文学部論叢』45)、「近世初頭大名家家臣の知行形態と財政構造」(『九州文化史研究所紀要』39)という二つの論文を成果として発表した。前者は幕藩体制下の「石〓」と「物成」との関係、つまり、いったん決定されるとその後固定化され現実の生産力と〓離していく傾向を示す「石〓」と、生産力と相対しこれを一定度反映する「物成」との関係に着目し、「物成」が家臣に対する知行宛行の基準として、また年貢収取の基準として機能していく過程を明らかにしたものである。私は、日本近世の知行制の特質とは、給人が一定割合の物成額を収納できることを前提に知行高を設定し、これを宛て行う物成諸知行であると考えており、本稿によつて物成諸知行論に対して一定の理論的、実証的見通しを立て得たものと考えている。後者は全国的にも研究事例の少ない個別大名家臣の知行形態と財政構造について検討したものであり、物成諸知行への移行期における藩主権力と家臣の知行関係、財政的関係を考える上で好個の素材を提供している。この他に、まだ活字化するにいたっていないが、私の知行制研究の一応の総括として、近世初期(17世紀)の地方知行制と知行政策についてまとめており、また知行制と相即の関係にある給人財政の実態研究についてもとりまとめつつある。さらに本年度は、こうした知行制、給人財政のありようが、藩の政治形態をどのように規定したのかについて少し考えてみたい。
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