1993 Fiscal Year Annual Research Report
古代荘園と周辺村落における農事と祭祀に関する歴史的・考古学的研究-北陸地域を中心として-
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05610282
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Research Institution | Kanazawa Seiryo University |
Principal Investigator |
藤井 一二 金沢経済大学, 経済学部, 教授 (00139742)
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Keywords | 東大寺領荘園 / 荘園絵図 / 荘園遺跡 / 荘園村落 / 荘所 / 神田 / 労働力編成 / 農事 |
Research Abstract |
本年度は、当該課題の研究実施計画に沿って、参考文献・調査報告書の調査・収集と関連遺跡の現地踏査などを行い、次年度への継続研究(内約)に必要な基礎的作業を実施した。実質的な活動期間が短いという制約の中で、調査機関として東京都立中央図書館・法政大学図書館、富山・石川両県立埋蔵分化財センター・平凡社地方資料センターをはじめ、各地教育委員会等の協力を得て貴重な考古学データーを収集することに務めた。とくに金沢市上荒屋遺跡・松任市横江遺跡、高岡市中田常国遺跡、富山県大島町北高木遺跡、同県立山町辻遺跡は全国的にも注目される古代の荘所(荘園管理施設)や周辺集落に関わる遺跡であり、当該期にその近辺に実在したことが知られる東大寺領加賀国横江荘、同越中国射水郡鳴戸荘、同礪波群石粟荘、同新川群大藪荘の開発・経営に中枢的役割を果たした荘家や労働力を投入しえた周辺村落の史的性格を究明する上で重要な意義をもつと判断された。このうち越中国における東大寺領荘園と周辺村落の農事に焦点をあて、(a)鳴戸荘に関する天平宝字三年・神護景雲元年の絵図を中心に検討し、成立段階の占定対象に葦の群生する野地が広く展開したが開発・開溝とともに新たな集落が形成され、その近辺に移住・定着した農民の口分田・墾田が集中していった様相を推定した。また、(b)石粟荘(旧橘奈良麻呂地)に関する天平宝字三年の絵図を検討し、射水・礪波両群にわたる四カ所の神社に対し荘内に神田を設定した背景には、荘園に必要な労働力が外部の諸村落から進出していた実情があると推論した。その成果の一端は、論文の他に「東大寺領石粟荘の歴史的環境-常国遺跡と家持の時代-」(於高岡市万葉歴史館)としても発表し原稿作成の基準を進めている。
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[Publications] 藤井,一二: "「越中国礪波群石粟村官施入田地図」の歴史的性格" 『続日本紀研究会創立四十周年記念論文集』塙書房. 全1巻. 285-300 (1994)
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[Publications] 藤井,一二: "東大寺領越中国鳴戸荘の立地と開発" 『歴史の中の都市と村落社会』思文閣出版. 全1巻(印刷中). (1994)